October 11, 2019 | Architecture, Design | casabrutus.com
東京・品川区内にある名建築が1日だけ公開される『オープンしなけん』。3月に開催され、好評だったこのイベントが11月30日に帰ってきます! 建築の魅力を改めて知ることができるイベントです。

『オープンしなけん』は近現代の建物を中心にガイドツアーや研究調査を行っている〈東京建築アクセスポイント〉が品川区とコラボレーションして行うイベントだ。所有者の協力で通常は非公開の物件も含め、1日限りで見ることができる。東京建築アクセスポイントは建築史家の倉方俊輔や和田菜穂子らがメンバーとなって運営している団体。建築を知り尽くした彼らが革新性、歴史性など7つの指標からセレクトした物件はどれも一見の価値があるものばかりだ。

たとえば〈白雉子ビル〉は村野藤吾が率いた村野・森建築事務所の設計。1階のピロティに徳川家光に縁があるという〈雉子神社〉が建てられている。神社を守るようにオフィスビルが建つ、ちょっと珍しい光景だ。

磯崎新設計の〈有時庵〉(うじあん)はにじり口にステンレス、壁にチタニウムパネルなど現代の素材を使い、円形の屋根を載せた現代の茶室。一方で床柱に薬師寺古材の檜を、他にも千年屋久杉や丹波椿といった貴重な木材をあしらっている。新と旧が緊張感を生んでいる。
〈品川パブテスト教会〉はフランク・ロイド・ライトに学んだ天野太郎と、その研究室に在籍していた吉原正によるもの。プロテスタントらしい、どちらかといえば簡素なつくりだが、内部にはハイサイドライトから入る光とぬくもりのある木がつくり出す、調和のとれた空間が広がる。

以上を含む全12物件は当日に限り申し込み不要で見学できるが、〈土浦亀城邸〉だけはガイドツアーに申し込まないと見られない。ここは数年前まで居住者がいたため、ほとんど公開されることはなかった。フランク・ロイド・ライトに学んだモダニズムの建築家、土浦亀城の自邸だったこの建物は、白い箱の中にスキップフロアや吹き抜けがのびのびとした空間を作っている。階段の蹴上げの水色といった色遣いや、広々とした浴室に彼自身の理想の暮らしが見える。
建築は実際にその場を訪れると、思ったより多くのことを教えてくれる。晩秋の一日を品川の建築巡りで楽しもう。