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建築家・田根剛が手掛ける展示空間に注目!

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June 10, 2016 | Architecture, Art, Design | a wall newspaper | photo_Kenya Abe text_Wakako Miyake ©DGT.

パリから帰国中の田根剛は超多忙だ。その理由は、国内2か所で展示があるから。その詳細をインタビューしました。

タイトルは《Parts to the Furniture》。椅子のパーツがワイヤーにつるされ、来場者を囲む。「意外だったのは風。会場のドアを開けると風でパーツがくるくる回るんです」。パーツは展示が終わると、工場に戻され、ちゃんと椅子になる。「なので、傷つけないよう細心の注意を払っています」
東京出身で、現在パリを拠点に世界で活動している建築家・田根剛が「第2の故郷」という北海道・旭川。ここは、彼が大学で建築を学んだ街でもあるのだ。6月22日から開催される『旭川デザインウィーク』での展示を行うことになった田根、それはとても嬉しい依頼だったそうだ。

「昨年、旭川デザインウィークが立ち上がったと聞いて、何か関われたらいいな、と思っていたら2年目でいきなり連絡が来た。もう、すぐに引き受けました。ただ、こちらからの条件もあり、それは家具の工場を見学したいということ」
Hokkaido
旭川デザインウィーク
6月22日〜26日
旭川家具センター
実は旭川は世界でも稀有な街なのだ。森を育て、木を伐採し、製材する。それを加工して家具を作る工場があり、ショップもある。林業から家具販売までが同地域内でまかなわれ、さらにはデザイナーや学生も育てていると、地域産業として、他に類を見ない環境が整っている。

「それで工場見学をさせていただいたのですが、工程がとても面白かった。また、家具というのは継いだり組み合わせて完成するプロダクトなのですが、それぞれのパーツを職人が次の工程のために1ダースや10個単位で効率よく並べているんです。その積み方がとても美しく、印象的でした」

今回の展示空間はそこからインスピレーションを受けたとのこと。椅子を作るための全パーツがワイヤーでつるされ、来場者はその中を歩ける。さらにはパーツの影が完成された椅子に見えるよう光の当て方を工夫するなど、光と影の演出も楽しむことができる。
また、同時期に開催されている〈東京都美術館〉の『ポンピドゥー・センター傑作展』でも展示空間を担当。1906年からパリにポンピドゥーセンターが完成した77年までを1年1作家1作品でたどるというもので、その内容を、会場構成のスケッチを描きながら説明してくれた。
Tokyo
ポンピドゥー・センター傑作展
6月11日〜9月22日
東京都美術館 企画展示室
1913年はデュシャンの《自転車の車輪》など、1906〜77年の各年ごとに1作家の1作品を取り上げる。ピカソやマティスもいる、20世紀美術を一望する展示だ。「1フロアではなく、3つのフロアに分かれているので難しいといえば難しいのですが、その分、面白いこともできたと思います」 ©Succession Marcel Duchamp/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2016 E2050 Photo: ©Christian Bahier et Philippe Migeat-Centre Pompidou, MNAM-CCI
「面白いのは、作家の言葉とポートレートも、作品と一緒に展示するところ。著名な人もそうでもない人もいるのですが、顔と作品と言葉を並列することで、情報が多くなり、作品への理解度もぐっと深まるんです」

田根が空間をつくる際に最も大切にしているのが「思いを形にしていくこと」だという。旭川がやろうとしている思いや記憶、美術館が体験してほしい、アート観賞の方法。「それらをどう物質に、また空間に変えられるかというのが僕らの仕事だと思っています」

田根剛

たねつよし 1979年東京生まれ。旭川にある北海道東海大学芸術工学部建築学科に進学し、在学中にスウェーデンに留学。2006年にDGT.をパートナーと設立し、パリを拠点に活躍する。この秋、10年がかりの〈エストニア国立博物館〉がいよいよオープンする。6月はもうひとつ、ダンスカンパニー〈Noism〉の舞台空間も手掛けて、大忙し。

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