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ヴェネチアビエンナーレ国際建築展、日本館の快挙です!

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June 4, 2016 | Architecture | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano

建築界のオリンピック、第15回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展で日本館が審査員特別賞を受賞しました! 金獅子賞のスペイン館に次ぐ快挙です。各国のジャーナリストからも評価の高かった展示を速報します。

審査員特別賞(Special Mention)の賞状を受け取るキュレーターの山名善之。長い時間かけて準備してきただけに、喜びもひとしお。 photo_Yuji Ono
今回の日本館のテーマは「en [縁]:アート・オブ・ネクサス」。経済的な低迷が続いたところに東日本大震災が起き、あらゆる分野で価値観の転換を迫られている状況に対して、建築家がどのように応えているのかをていねいな展示で紹介した点が高く評価された。
吉阪隆正の設計により1956年に完成した日本館。展示は中がのぞきこめる大きな模型、写真など、立体的な構成。 photo_Yuji Ono
たとえば西田司+中川エリカの〈横浜アパートメント〉は、1階に半屋外のスペースがあり、〈横浜アパートメント〉の住人や近隣に住む人たちがワークショップやイベントに使える。成瀬・猪熊建築設計事務所の〈LT城西〉は共同のリビングやキッチンがあるシェアハウス。流動的な社会に暮らす人々の関係性を生み出す空間だ。
西田司+中川エリカの〈横浜アパートメント〉実景。吹き抜けになった1階は出入りが自由。共同のキッチンもあり、ちょっとしたパーティもできる。 ©Koichi Torimura
能作アーキテクツが設計した〈高岡のゲストハウス〉は、建築家の祖母の家をゲストハウスにするもの。元の家の屋根瓦や障子、家族が使っていた道具などが使われて家族の記憶を継承し、宿泊者にもその記憶を伝える。青木弘司の〈調布の家〉でも新旧の素材を組み合わせて、時間の蓄積を感じさせる豊かな空間を作り上げた。
小豆島のドットアーキテクツ〈Umaki Camp〉では瀬戸内国際芸術祭期間中、お茶やお菓子を出してくれる「お接待」などが行われている。 ©Yoshiro Masuda
坂東幸輔が主宰するBUSは、徳島県神山町で空き家や閉鎖された工場をIT企業のサテライトオフィスにリノベーションするプロジェクトを展開している。中でも〈えんがわオフィス〉は縁側や軒といった日本家屋特有のエレメントを活かして、働くことと地域の人々とをシームレスにつなぐ試みだ。

ドットアーキテクツの小豆島〈Umaki Camp〉は建築の専門家でなくても「建てる」という行為に参加できる建築。みんなで料理を作ったり映画を制作したり、ラジオ放送をしたりできるスペースだ。この二つのプロジェクトは建築が地域内、あるいは東京と地方の“縁”を結ぶことを目指している。
BUSが神山町で手がけるプロジェクトの一つ、〈えんがわオフィス〉。日本家屋をオフィスにリノベーション。ほっこりする懐かしさで、仕事にもいい影響がありそう。 © Satoru Ito Architects and Associates
人々や家具、前を通る車まで細かく再現された模型。主役である人がどんなふうに暮らしているのかが想像できて楽しい。中までじっくり見ながら楽しんでいる人が多かった。 photo_Yuji Ono
こういったさまざまな「en [縁]」を生み出す建築は、ヴェネチアビエンナーレ国際建築展の総合ディレクター、アレハンドロ・アラヴェナの活動にも通じる。彼は2010年のチリ大地震後の復興支援プロジェクトとして半分だけ造り、残りの半分を住民が自分で造る恒久的な住宅を提案するなど、ソーシャルな建築の中でも一際ユニークな活動を展開している。
「日本館の展示、いいよね」と言ってくれたドイツの建築研究者はこう語った。「僕も学生のころは建築家の個性が強く出た、見た目の美しい“作品”に夢中になっていたけれど、今はそういう時代ではない。日本館の展示は建築家たちがこの困難な状況に対して前向きな解決策を示していること、また建物を使う人をいろいろな方法で巻き込もうとしているところがとてもいいと思う」。
日本館に参加した建築家たちが勢揃い。今回の受賞で、海外からもますます注目が集まるはず。 Photo by: Andrea Avezzù  Courtesy: La Biennale di Venezia
今回は総合ディレクター、アラヴェナの影響もあって、他国のパビリオンでもシェアやコミュニティ、サステナビリティ(持続性)をテーマにする館が多かった。が、日本館の模型やインスタレーションは家具や小物まで再現されて、人々の暮らしやアクティビティが想像できるようになっているなど、「縁」をわかりやすく表現したプレゼンテーションで頭一つ抜けていた感じがある。出展者は70年代生まれが中心だ。これからという若い世代が積み上げてきたことが、国際展でこれだけ評価されたことを素直に喜びたい。

en [縁]:アート・オブ・ネクサス

〜11月27日。ヴェネチア・ビエンナーレ ジャルディーニ地区、日本館。公式サイト

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