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ミラノサローネ2018報告 #4 / 復刻 by 田代かおる

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June 3, 2018 | Design, Architecture, Art | text_Kaoru Tashiro

年に一度、4月のミラノはお祭り騒ぎ! 世界の家具メーカーが一斉に新作を発表します。今年、4人のジャーナリストがそこで見つけたものは…? 最後はミラノ在住、イタリアデザインの全盛期を築いたマエストロたちへの取材経験も豊富なデザインジャーナリストの田代かおる。「リプロダクションは熟成期へ突入。今、老舗デザインメーカーはアーカイブ発掘に熱心です。知られざる名作やストーリーとあちこちで出会える、復刻ハンティングはやっぱりやめられません!」

Paolo Tilche

De Padova – Archivio Storico Bonacina1889《Silvia(1960)》 シンプルに籐フレームとインド葦の編み技術の魅力を引き出した復刻品。一瞬、フランコ・アルビーニのデザインかと思いきや、デザイナーはパオロ・ティルケ。エッセンシャルなデザインはまさにデパドヴァらしく、彼に白羽の矢を立てたセレクトもお見事。

復刻の話題に事欠かなくなった近年のミラノ・デザインウィーク。今年も数多のリエディションに心を掴まれた。特筆したいのは、現代の記憶からこぼれ落ちてしまったデザイナーたちの復権だ。例えば、〈デパドヴァ〉は、他社〈ボナチーナ1889〉のアーカイブから、パオロ・ティルケとモンティ兄弟を。また〈B&B〉は、カッチャ・ドミニオーニの家具のセレクションを復刻し、表舞台に持ち上げた。

巨匠の名作復刻も歓迎。でも歴史を掘り起こすなら、今あえて見直したい作品をメーカーに選んでほしい。リエディションとはコレクターズアイテムではなく、実はデザインのルーツを辿って未来に向かうための作業だから。

Le Corbusier, Charlotte Perriand

CASSINA《Maison du Brésil(1959)》ルシオ・コスタのプランをもとにル・コルビュジエが完成させたパリ国際大学都市のブラジル館。 この寮室のため、シャルロット・ペリアンとデザインした家具一式が、30セットのリミテッドエディションで復刻。狭小空間の家具に惹かれるのは私だけでしょうか。

Yngve Ekström

SWEDESE《Thema(1953)》〈SWEDESE〉創始者の一人、イングヴ・エクストロームの記念すべき家具デザインのデビュー作がこの椅子。ハンガーのようなバックレスト、黒塗りのバーチとオーク材のバランスも深く思考しながら洗練しすぎない。ほどよい加減を感じさせるデザインなのである。

Frank Lloyd Wright

Offecct《Soundwave Ennis》オフェクトは今年から復刻部門をスタート。その一つがこのリサイクルポリエステル素材のアコースティックパネル。モチーフをライトが1924年に設計したエニス邸の外壁から得て、オフェクトが新パネルを開発。単なる復刻でない、こんなユニークなコラボもありうると目を開かされた。

Fratelli Monti

De Padova - Archivio Storico Bonacina1889《T. 54(1954)》 デパドヴァがラタン家具の〈ボナチーナ1889〉の歴史アーカイブから復刻したアームチェア。スチールフレームとラタンの編みの結合技術がデザインポイント。モンティ兄弟は本国イタリアでも忘れられた存在だけに、新鮮な掘り出し気分のあった一点。

Gianfranco Frattini

Acerbis《Gong (1987)》1989年のコンパッソ・ドーロ賞にも輝いた、フラッティーニのローテーブルが復刻。ポストモダンに沸く時代に発表された、二つの円を六角形の脚が支えるミニマルデザイン。時代の主流から逸れながらも、生き延びるデザインとは何かを考えさせられる。

Gino Sarfatti

Flos with Sarfatti (Astep)《Le Sfere(1960-1962)》 照明のマエストロ、ジノ・サルファッティの復刻が進む。なかでも今年発表された「スフェレ」シリーズはサルファッティの傑作のひとつ。ガラスの球体とフレーム、むき出しのケーブルの線が秩序正しく混ざり合ったシャンデリアは、モダンなエレガントを極める明かり。

Antonio Bonet, Juan Kurchan &Jorge Ferrari Hardoy

Knoll《Butterfly (1938)Anniversary edition》 〈Knoll〉は、《バタフライ》の米国ライセンスを1947年に取得するも、コピー製品に法的措置が取れず51年に生産を中止。そして同社と《バタフライ》が共に80周年を迎える今年、アニバーサリーエディションを発表。クオリティで再び家具業界に挑む姿に感銘。

Gio Ponti

Molteni & Co.《D.859.1(1958)》ニューヨーク、タイム&ライフ社ビルのオーディトリウム増築を任されたポンティは、建築と共に家具もデザイン。うち、10人掛けアッシュ材テーブルが復刻。テーブルトップはポンティが「ディアマンテ」と呼ぶ横長の六角形。脚のフォルムと真鍮使いにも、さすがとうならされる。

Luigi Caccia Dominioni

B&B《Catilina (1958)》ほか かつて〈Azucena〉から発表されたルイジ・カッチャ・ドミニオーニの代表作が〈B&B〉から蘇った。会期中は彼に捧げる展覧会も開催。この方こそ、ジオ・ポンティ次世代のミラノのモダン建築、デザインを代表したマエストロ。再評価すべき存在です。

田代かおる

ミラノと東京を拠点にするデザイン&建築ライター。ジオ・ポンティの建築を紹介する『建築の皮膚と体温』(LIXIL)展などキュレーションも手がける。現在、日本のデザインアーカイブを構想中。

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