January 15, 2025 | Design, Food, Travel | casabrutus.com
デンマーク・コペンハーゲンのデザインシーンを牽引するデザインスタジオ〈フラマ〉。2024年6月にコペンハーゲンで開催されたデザインイベント『3daysofdesign』ではフェイ・トゥーグッドとのコラボレーションで話題となり、夏には初のワインバー〈Bar Vitrine〉もオープン。さらに12月には、彫刻家のアトリエに着想を得た新感覚のアポセカリーライン《Sculpture Garden》が登場。止まることなく進化を続ける〈フラマ〉ディレクター、ニルス・ストライヤー・クリストファーセンに話を聞いた。
FRAMA初のワインバー〈Bar Vitrine〉は、コペンハーゲンの中心部、Møntergadeとアクセスの良い立地にある。気の利いたフードをつまみながら、ナチュラルワインが楽しめるため、開店から数ヶ月、連日大盛況の地元で人気のバーになっている。
「〈フラマ〉は人々と空間を中心としたブランドであり続けることがアイデンティティです。これまでの活動に加え、〈フラマ〉のスタジオに隣接したカフェ〈APOTEK57〉からさらに発展させた実験的なコミュニティの拠点を作りたいと考えたことが〈Bar Vitrine〉をオープンした主な理由です。料理は元ノーマのシェフでインド出身のドゥリティ・アロラに依頼し、多国籍でコンテンポラリーな料理とワインが楽しめます。アラカルトでオーダーでき、ワイン一杯でも気軽に立ち寄れる場所です」(ニルス・ストライヤー・クリストファーセン)
●彫刻家のアトリエからインスピレーションを得た、ハンドケア
人気のセルフケアシリーズ「St PAUL APOTHECARY」ラインに、新たに人間の五感を刺激する《Spatial Self Care - Sculpture Garden》が12月より日本で発売開始された。彫刻家のアトリエからインスピレーションを得たという同製品は「彫刻は空間に意味を与えるために存在する」と語ったイサム・ノグチの言葉に触発され、手を洗い香りを纏う行為を同じ定義になぞらえ、五感と空間を結ぶハンドケアアイテムを目指し作られたものだ。
ラテン語で「柱」を意味するColumnae (コルムナエ)は石造りの建造物や物語ある歴史のムスクを想起させ、ベチバー、ブラックペッパー、ビターオレンジ、トゥヤのノート。フランス語で「階段」を意味する Escalier(エスカリエ)はエキゾチックでスパイシーなキャロットシード、カルダモン、ベチバー、ブラッドオレンジのノート。食べ物の素材を使ったレシピのように香りを作っており、新感覚のハンドケアシリーズという印象だ。
「ハンドケアはもっとも身近な行為であり、目に見えない体験でありながらも人々の五感を刺激します。このシリーズは香りの世界に建築的な文脈を取り入れることで、これまでのラインナップと同じ系譜上にありながらも、一歩昇華させた新たなアプローチです。毎日使うことで“空間に意味を与える”存在にもなることも意識しています。今回のアプローチのように、手にまつわる習慣や “ハンドカルチャー”は興味深い題材で、まだまだ可能性があると感じています。今後もさまざまな国や地域、文化に目を向けながら〈フラマ〉のセルフケアを広げていきたいですね」
●〈Toogood〉とのコラボレーション「COLLAGE」を振り返る
2024年6月に開催された『3daysofdesign』期間中、大きな話題を呼んだ〈フラマ〉と〈トゥーグッド〉によるコラボレーション「COLLAGE」は、ニルスにとっても2024年の印象深い出来事だったと振り返る。ニルスから〈トゥーグッド〉に提案する形でプロジェクトはスタートしたが、ディスカッションしていく上でお互い考えていることがあまりにも同じだったことに驚きと喜びを感じたという。
「昨年の『3daysofdesign』では、ガストン・バシュラールの著作『空間の詩学』を参考に、ロンドンを拠点に活動している〈Toogood〉に提案する形で、食、デザイン、アート、建築、人々がシームレスに交わるような想像上の世界を創り出したいという思いからスタートしました。〈Toogood〉との協働による彫刻的な造形のモチーフはとてもエキサイティングで、〈フラマ〉の空間を思い描いていたイメージ通りに変化させるインパクトがあり、空間、人、体験を往来し合い、さまざまな分野や視点が織りなす、まさに“コラージュ”を象徴した展示になりました。この取り組みを振り返ると、ブランドやアイデンティティとして私たちが常に進化を恐れずに挑戦し続けていること、そして観客を驚かせながらも誠実さを保っていることに満足しています」
こうして最近の〈フラマ〉の活動を振り返ると、多面的な要素を併せ持ちながらもそこには緩やかに進化し続ける独自の美学が感じ取れる。常に私たちを魅了し続けてくれるニルスに今後の予定と日本のファンに向けたメッセージを尋ねてみた。
「今後の〈フラマ〉も、ある時は詩的であり、時にはフィジカルな体験であったり、誠実で驚きあるアプローチをみなさんに届けていきたいと思っています。また“チェアマニア”として、今後数年間のうちに、興味深い新しい椅子のプロジェクトが発表される予定です。近い将来、もっと物理的に日本に存在感を示したいと思っていて、その計画についてプランニングもしています。私にとって、日本はまるで第二の故郷のような場所であり、この国や人々には非常にポジティブな影響を与えられ続けています。日本中に広がるコミュニティ、友人、パートナーの仲間たちに感謝していますし、また訪れる日を楽しみにしています」
FRAMA
2011年、クリエイティブディレクター・ニルス・ストライヤー・クリストファーセンを中心に設立。コペンハーゲンを拠点に、五感を刺激する天然素材、シンプルな幾何学、普遍的な美しさにフォーカスした家具やライフスタイル・ボディケアからオブジェまでをフィジカルに手がけるデザインブランド。