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石上純也の最新作は、中国の湖に浮かぶ美術館〈Zaishui Art Museum〉です。

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March 15, 2024 | Architecture, Art | window on the world

中国・青島から車で約2時間。山東省日照市五蓮県に、2023年11月、石上純也が手がけたランドマークが誕生した。

写真ではほとんど見えないが、右手に広がる開発エリアへのエントランスとして機能する。同地域には、石上設計による高さ45m、最小幅1.3mの〈谷の教会〉も建設中。

〈Zaishui Art Museum〉は、美術館、ビジターセンターなどからなる巨大な複合施設。川沿いに作られた人工湖に浮かぶようにして建ち、その全長は1㎞というから驚く。

湖底から立ち上がる列柱に支えられた屋根は幅5~20m。場所によって高さや勾配を変え、湾曲する。最大の見どころは、室内外で連続する湖面の景色。ガラス下の隙間から引き込まれた水は満ち、砂州を思わせる床が浮かび上がる。

「「建築の中に、〝新しい外〞つまりランドスケープを作りたかったんです。内外で景色を連続させることで環境に寄り添うことを目指した。この地方らしい風景が出来上がったと思います」」(石上)

湖水が室内に入り込み、内外の概念が揺らぐ不思議な空間。柱間にはめ込まれたガラスの下部に隙間が設けられ、そこから湖の水が引き込まれる。テーブルや什器も石上がデザインした。

また、石上がこれまで手がけたプロジェクトを網羅する『a+u 2023年11月号 石上純也 最初から現在まで』(新建築社)も、昨年10月末に発売された。

収録されているのは、現在進行中を含む29作。特筆すべきは、それらが竣工順ではなく、石上がそのプロジェクトについて考え始めた順に並べられている点だろう。

「僕の中で、すべてのプロジェクトはつながっていますからね。考えた順番が実はとても大切なんです。なぜその時、その建築を見出したのか? 僕の思考の流れみたいなものが、この一冊を通して見えてくるといいなと思っています」

すべての解説文を、石上自らが当時を振り返りながら書き下ろしている点も面白い。時間が経過することで生まれた俯瞰的な視点が、“思考の流れ”をよりクリアなものにしているからだ。

デビュー作〈レストランのためのテーブル〉(2003年)から、26年に竣工予定の〈徳島文化芸術ホール(仮)〉まで、石上ファンならずとも読み応え十分の一冊ができあがった。

〈第11回ヴェネチア建築ビエンナーレ日本館〉(2007年)では、吉阪隆正が手がけた日本館の庭に、細いスチールの柱と薄いガラス板でできた4つの温室を配置した。その内外で、既存樹と新しく植えられた木々が混ざり合う。

〈Zaishui Art Museum〉

山東省白鷺湾文化創意産業園。10時〜16時。月曜休。

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