March 8, 2024 | Vehicle, Design | Chill CARS
〈三菱〉といえば、「ラリー」という印象を持つ人も少なからずいるかもしれない。その名声を築いたのが、1973年に登場した〈三菱〉の小型セダン《ランサー》だ。
高剛性のボディと優れたハンドリングを生かし、積極的に国際ラリーに挑戦。74年には『サファリラリー』で総合優勝をなし遂げた。その結果、《ランサー》は走りの良いクルマというイメージを獲得。当時は、レースやラリーでの勝利が販売数に強い影響を与えていたため、そのアピール効果は絶大で、《ランサー》をヒット作に導く一助となった。
取材車は、76年に改良を受けた後期型モデル。スポーティさが売りの《ランサー》だが、本質は、家族全員が快適に移動できるように設計されたファミリーカーだった。そのため当時のカタログでは、室内やトランクルームの広さ、静粛性の高さ、良好な燃費など、ファミリーカーに必要な要素をアピールしていた。
茶系統でまとめられた内外装の色調は、現在の視点から見ても上品。70年代前半デザインの抑揚ある車体を、半ば強引に新しいクルマに見せるための四角く大きなバンパーも特徴だ。外観からはスポーティさをあまり感じさせないが、ラリーで戦うために必要な強靭な車体と耐久性、力強いエンジン、軽快な走りは受け継いでいた。
かつてのモータースポーツと市販車の関係を語る証人として、国産車史に末長く刻んでおきたいクルマだ。
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