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【本と名言365】アントニ・ガウディ|「芸術に師はない。唯一の師は…」

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October 2, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。独創的な建築で、いまなお唯一無二の存在でありつづけるガウディ。彼はあの造形をどのように生み出したのでしょうか。

芸術に師はない。唯一の師は自分自身である。あるのは芸術を学ぶ方法である。

スペイン・バルセロナで活躍した建築家、アントニ・ガウディ。未完の聖堂と言われながら完成が近づく〈サグラダ・ファミリア〉をはじめ、7つの作品がユネスコの世界遺産に登録される。一度見たら忘れることのできない独自の造形からなる建築は時を超えて人々を魅了し続けるが、果たしてそれはどのように生まれたのか。

ガウディは19〜20世紀にかけてスペインのカタルーニャ地方で花開いた芸術様式〈モデルニスモ〉の第一人者としても知られる。モデルニスモとは、ヨーロッパでアール・ヌーボーが新しい芸術様式として盛んになるなかで生まれた様式で、曲線や華やかな装飾性を多用する。さらにカタルーニャ地方において民族主義的な伝統への関心が高まるとともに、独自の展開を見せた。ガウディは図面とともに膨大な数の模型を作ることで自身の考えを広げた。「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない」ともいった彼の表現のルーツは、幼少時に道端の草花や小さな生き物たちと触れ合った体験にある。ガウディは、「芸術に師はない。唯一の師は自分自身である。あるのは芸術を学ぶ方法である」と語る。

ガウディは歴史的な建築を文章ではなく図版から読み解くべきだといい、自身も学生時代には図書館でそれらを熟読したという。さらに晩年には建築写真集が図書館にも入るようになり、それを目にしたガウディは驚き喜んだという。彼の独創的なデザインはこうした自身の目を養い続けることで、構造力学的な合理性、有機的なスタイル、鮮やかな色彩、物語性に満ちた装飾を内包し、唯一無二の存在となった。後進の建築家や芸術家に影響を与えつつも、その存在はいまなお独創性に富む。その目が彼のクリエーションを支え続けたのだ。

スペインで11年にわたる研究を重ねた著者による、独自の資料に基づいて書き下ろされたガウディの人生。少年時代から晩年までの姿を詳細に描く。SD選書197『アントニオ・ガウディ』鳥居徳敏著 鹿島出版会2,200円/1985年初版発行

アントニ・ガウディ

1852年スペイン・カタルニア生まれ。建築家。バルセロナ建築高等技術学校で建築を学びながら、いくつかの建築設計事務所で働く。1878年に建築士の資格を取得。同年にデザインしたショーケースをきっかけに、パトロンとなるエウセビ・グエルと出合う。1883年にサグラダ・ファミリアの専任建築家に推薦され、後にその仕事に専念。1926年死去。

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