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伝統工芸王国・金沢の地で、再び花開く〈国立工芸館〉。

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March 18, 2022 | Design, Architecture, Travel

東京から金沢へと拠点を移して2020年に開館した〈国立工芸館〉。新たな館も登録有形文化財に指定された旧陸軍の施設だ。建築当時の姿を復元したその魅力を紹介します。

2つの建物を繋ぐエントランス。その奥にある中庭に展示されているのは金子潤による高さ約3mの陶磁作品で、強い存在感を放つ。

東京・竹橋にあった日本で唯一の工芸を専門とする国立美術館が、工芸王国・金沢の地に、移転開館した。〈国立工芸館〉(正式名称〈東京国立近代美術館工芸館〉)の新たな館となるのは、竹橋の建物と同じく明治期に建てられた旧陸軍の施設だ。〈旧陸軍第九師団司令部庁舎〉(1889年竣工)と〈旧陸軍金沢偕行社〉(1909年竣工)は、ともに旧陸軍設計部が設計した近代洋風建築である。司令庁舎は金沢城二の丸跡地に、将校たちのクラブであった偕行社は工芸館の建つ敷地の道路を挟んだ向かい側にそれぞれ建設された。その後、両館は別の場所に移され、今回は2度目の移築となる。

兼六園周辺文化の森に建つ〈国立工芸館〉。右の〈旧陸軍金沢偕行社〉の建物にはオフィスや多目的ホールが入り、左の〈旧陸軍第九師団司令部庁舎〉が展示室となる。

国の登録有形文化材にも指定されている2つの建物は、工芸館として活用するにあたり、建設当時の姿が取り戻された。建物の色が再現され、展示室となる司令部庁舎は白壁に茶の柱や窓枠が映えるシックな雰囲気に、多目的ホールなどの入る偕行社は窓枠と柱が緑となり華やかさを取り戻した。また司令部庁舎は建物の両翼が、偕行社は裏手の講堂部分が撤去されていたが、RC造で復元された。

優美な階段室。

館内も優美な意匠が随所で復元され、特に司令部庁舎の階段室は、アカンサスの葉の柱頭飾りや天井の漆喰レリーフが美しい。旧工芸館のエントランスホールにも似たこの空間では、旧工芸館のシャンデリアを参考に照明を制作した。

金沢には、竹橋にあったコレクションの中から約1900点が移転したが、同時代に建てられた建物として、そのデザインの記憶も受け継いでいく。

〈国立工芸館〉

石川県金沢市出羽町3-2。TEL 050 5541 8600。9時30分〜17時30分。月曜休(祝日の場合は翌平日休)。入館料は展覧会により異なる。オンラインによる日時指定・定員制を導入。

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