November 16, 2021 | Design, Architecture, Culture | a wall newspaper
東京を飛び出した “SKWAT” は〈twelvebooks〉と共に京都へ。隈研吾によるリノベーションが行われた近代建築を音で占拠する。
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青山や原宿にある建物を次々と “占拠” し注目を集めるプロジェクト “SKWAT”。SQUAT(=占拠する)を語源に、空き物件などに期間限定のコンテンツを展開し、カルチャーの発信と同時に価値観の転換を投げかけてきた。今回、第5弾として選んだのは、京都の中心地、四条烏丸にある〈COCON KARASUMA〉。2004年に隈研吾によるリノベーションで誕生した複合商業施設だ。
今年7月には17年ぶりの改装が施され、ウッドパネルや木の階段、烏丸通に面した開放的なテラスを持つアトリウムが誕生している。その広々とした空間を中心に展開する『SKWAT HERTZ(スクワット ヘルツ)』。HERTZは周波数の単位。つまり音をテーマにした “SKWAT” というわけだ。
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「まず考えたのは、建物が持つリソースをバージョンアップすること。手法やデザインも含め、その場でしか起こり得ないものを生々しい形で作れば、それは人の心に刺さるはず」と主宰する〈ダイケイミルズ〉代表の中村圭佑は話す。最上階には「アルファステーション」の名で親しまれるラジオ局、エフエム京都があり、電波による情報発信が行われている。
「これまで “SKWAT“ はフィジカルな場所で行ってきたけれど、目に見えないものを含めて社会の価値の転換を起こすことに重きを置いた運動であり、思想でもある。ここでは電波を “SKWAT” することを主軸にコンテンツを逆算しました。コロナ禍のタイミングでは、そこを訪れる人々とものを作っていく状況が大事じゃないかと」
〈ORCHESTRA(オーケストラ)〉と名づけられたアトリウムの主役はストリートピアノ。音を耳にした人々を惹きつけるだけでなく、自由に行われた演奏は録音され、連動するラジオ番組のジングルへと昇華する。まさに建物を通じたインタラクションの実現だ。
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もうひとつの軸は経営者が集った会員制サロン、京都経済倶楽部だった空間に展開する〈twelvebooks〉。今年生誕100周年を迎えた芸術家ヨーゼフ・ボイスのアーカイブ資料を展示販売する「Beuys Room」をメインに、流通に乗らなくなったアートブックを一律1000円で販売する「thousandbooks」からなる。
「経営者が集い、資本主義の思想の投げ掛け合いが行われたであろう場で、また新たにポリティカルなものをぶつけられないかと」
かくして音を軸に〈COCON KARASUMA〉の価値を再認識するプロジェクトは幕を開けた。その反響は驚くほどだという。“SKWAT” が終わる12月には、建物への誇りが街を席巻するはずだ。