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〈村上春樹ライブラリー〉を設計した隈研吾に現地取材&館内徹底レポート!

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November 1, 2021 | Architecture, Culture, Design | a wall newspaper

早稲田大学構内に開館した〈村上春樹ライブラリー〉。設計を手がけた隈研吾さんの案内で訪れました。

隈が設計した、10月1日オープンの〈早稲田大学国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)〉のエントランスにて。世界中の村上春樹ファンたちの巡礼地になりそう!

少し古めかしい、どっしりとした講義棟が建ち並ぶ早稲田大学の構内に突然現れる、外壁から窓まで真っ白の箱型の建物。“箱” の周りには木製の庇が生き物のように絡みつき、辺りでは思い思いに植物が伸びる。庇が持ち上がったエントランスを通り抜けると、さらに驚きが待っている──地下へと伸びていく大階段、地階から2階までの3層を貫く木製のトンネル。トンネルの壁面はすべて棚になっていて、国内外の文学作品がそこを埋める。

「僕にとって村上さんの作品世界は “トンネル” のイメージなんです。そこを行き来することで時空が変わり、何かが始まるような……。今回のリノベーションはまず、そのトンネルのイメージを中心に据えて、空間全体を構成していきました」

真っ白い箱型の建物に木製の庇が絡みつく外観。

早稲田大学の早稲田キャンパス内に10月1日に開館した〈早稲田大学国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)〉でそう話すのは、このライブラリーの設計を手がけた隈研吾。

建物の通称が示すように、ここは刊行された村上春樹作品の日本語版/外国語版や、村上本人から寄託・寄贈された各種の資料や書評、そして村上自身のレコード・CDコレクションの一部などを収蔵するほか、広く文学関連の書籍を収蔵するライブラリーだ。学生時代を同大学で過ごした村上からの書籍や資料の寄贈を受けたのをきっかけに、プロジェクトがスタートしたのだそう。早大生はもちろん、一般客にも開かれている(要予約)から、文学好きな人ならば一度は訪れてみたい場所だ。

・B1〈階段本棚/村上さんの書斎/地下エントランス/中庭/カフェ〉村上ファン垂涎の家具にも出会える場。

トンネルのような空間に、国内外の文学作品が並ぶ〈階段本棚〉

〈階段本棚〉で本を選ぶ隈。
川上未映子、古川日出男ら人気の国内作家も選書に参画。

村上の書斎を忠実に再現した〈村上さんの書斎〉

村上の書斎を再現した〈村上さんの書斎〉。特別なイベントの際に入室が可能だ。

舞台の装置などが展示される地下エントランス

地階のエントランスより。奥に見えるポケットパークも新たに整備して、木陰で読書できる居場所が生まれている。

ライブラリーからの眺めも素敵なポケットパーク

地階からもアクセスできるポケットパーク。天気のいい日の居心地は最高。

早稲田大学生によって運営されるカフェ〈橙子猫 - Orange Cat -〉

カフェ脇の使い込まれたテーブルは村上宅にあったもの。

地下1階から2階までのライブラリーの構成も魅力的だ。大階段の壁面の “階段本棚” を埋めるのは、村上作品を起点にしたさまざまな事柄を扱う関連書籍や、翻訳家の柴田元幸、作家のデイヴィッド・ミッチェルや川上未映子、古川日出男など、文学界のスターたちの選書による“読むべき本”の数々。この空間はライブラリーながら “おしゃべり可”。大階段に腰かけて本を読み、その世界について話をする……。本を起点にしたコミュニケーションが無限に生まれそうな場だ。この階段空間を中心に、村上の現在の書斎を再現したスペースや、音響機材を備えたスタジオ、早大生が独自に運営するカフェスペースなどが展開。訪れた人は時間を忘れて過ごすことになりそうだ。

・1F〈ギャラリーラウンジ/オーディオルーム〉本や音楽と共にある空間で文学の世界にどっぷり。

日本語版から各国語訳まで、村上作品で囲まれた〈ギャラリーラウンジ〉

〈ギャラリーラウンジ〉。ずらりと並ぶ村上作品は壮観。
各国語版の村上作品。50か国語以上に翻訳された村上作品の訳書が揃う。表紙の違いなどを見比べるのも興味深い。

村上自身が長年集めてきたレコードを楽しめる〈オーディオルーム〉

村上のレコードコレクションを展示する〈オーディオルーム〉。

2F〈スタジオ/展示室/ラボ〉イベントや企画も楽しみな大きな可能性を持つ場。

ラジオ放送も可能な設備を完備した〈スタジオ〉

本格的な設備を備えたスタジオ。ここから『村上RADIO』の生放送も!?

様々な展示を開催する展示室

展示室では、様々な企画展を開催予定だ。

講演や講義など、多様なイベントが可能な〈ラボ〉

さまざまなイベントにも使える〈ラボ〉。

隈研吾

くまけんご 建築家。1954年生まれ。90年隈研吾建築都市設計事務所を設立。東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授、早稲田大学特命教授。2021年隈研吾建築奨学財団を設立。

〈早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)〉

東京都新宿区西早稲田1-6-1早稲田大学4号館。10時〜17時。カフェの利用以外の入館は予約が必要。詳細は公式サイトで確認を。

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