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京都らしい暮らしを提案するショップ。

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October 31, 2021 | Travel, Architecture, Art, Design, Food | casabrutus.com

発売中のCasa BRUTUS特別編集『京都シティガイド』より、「京都らしい暮らしを提案するショップ」をご紹介します。

・〈木の根〉/〈gallery LAKEWALL〉

改装を手がけたのは大阪・八尾で喫茶室〈ダイドコ帖〉を営む〈北村建築研究工房〉。大きな窓が設けられ、明るい空間になった。

新たな顔が加わった、センスを買いに行く店。

京都ではつい器を買ってしまう。そんな声をよく耳にするのは、センスに絶対の信頼をおける店主たちが数多くいるからに違いない。

〈木と根〉の林宗里さん・七緒美さん夫妻もそんな1組だ。井山三希子、岡田直人、伊藤聡信ら人気の作家たちともじっくり向き合い、作品を提案し続けてきた。器に加え、籠や布ものから古物まで日用の道具を揃える。「扱うものが和寄りのテイストになってきたこともあって、今の感覚にしっくりくる空間が欲しくて」と15周年を迎えた2020年、店の半分をリノベーション。明るく端正な空間に生まれ変わった。

毎回雰囲気は一変する。この日は渡邊浩幸の木工展。物語のある洋服を作る〈Art de V.〉、びわ湖真珠を扱う〈神保真珠〉などの展覧会も定期的に開催されている。

それに先駆け、19年にオープンさせたのが分室となる〈gallery LAKEWALL〉。窓の外に京都御苑の緑を眺めるロケーション。〈木と根〉では難しかった壁面を使った絵画の展示やワークショップなどが、ゆったりしたペースで開かれている。京都御苑の湖のように美しい池と、壁を組み合わせた造語の名にも豊かな感性を感じさせる。

・〈日日・冬夏〉

手前から時計回りに/変わり雷模様の七寸平皿、滴七宝 長手胴張蒔地皿、布目八寸皿鉢(すべて参考商品)。

座売りを思わすスタイルが、今の時代に新鮮。

町家改装系の店は枚挙にいとまがない京都でも、築100年を超える数寄屋建築は珍しい。その端正な空間に手を加えすぎず作られたのがギャラリー〈日日〉とティールーム〈冬夏〉だ。庭に面した座敷で展開する〈日日〉には漆器をはじめ、職人の手仕事による日用の器や道具が揃う。広々とした空間に比して並ぶ商品の数はけっして多くはないが、そこには仕掛けがある。たとえば皿を見たいと目的を伝えれば、奥から運ばれてくるのはいくつもの箱。丁寧な説明とともにひとつずつ皿が取り出され、提案されるのだ。かつて京都でポピュラーだった「座売り」を思わせるスタイルには、ものが持つストーリーを知り、手に入れる喜びがある。

展覧会はもちろん常設でも折々に変わるディスプレイが美しい。この日の主役は中里太亀の水指。

一方、ティールーム〈冬夏〉で供されるのは、こちらも信頼する作り手による無農薬栽培の茶と菓子。まず最初の一杯の井戸水から始まり、心をこめて淹れられる茶を味わう。ものにも茶にも、真摯に向き合う姿勢を提案してくれる静かな場所がここにある。

・〈ケイオカイライ〉

現在、雰囲気は一変しているが、宮脇夫妻のセンスが満ちる。写真はシューズブランド〈SUI〉の受注会。

デザインを軸に切り取るアイテムが魅力。

ヴィンテージを中心にフィンランドデザインを12年にわたって発信してきた〈サルミアッキ〉が店名も新たにリスタート。長く使えるものにこそデザインは宿るというフィンランドの格言どおり、世界中のものから世界観を共有する、丁寧に作られたものをセレクトするショップへと生まれ変わった。〈ケイオカイライ〉は「過去のものを引き継ぎ、発展させる意味の“継往開来”という言葉」に由来し、店主の宮脇啓・美和夫妻の想いを込めている。

香川の庵治石を使ったブックエンド(販売終了)

1階にはロサンゼルス〈RITUALS INCENSE〉のインセンスや、フィンランドから帰国して京都で作陶する陶芸家・大野藍の器など、シンプルながら生活に潤いをもたらす生活雑貨、上質な着心地の洋服が並ぶ。2階はフィンランドが2人の心に残したものを伝えるべく、ユーズドウェアのセレクトとアーカイブを展開。3階は2021年冬からリニューアルし、アートギャラリーに。3つの切り口でデザインと共にある暮らしを提案してくれる。

・〈toripie KYOTO〉

木の器は小倉広太郎の木盤33,000円、リム皿12,100円、蓮弁各12,100円など。奥の白い器は打田翠のぐいのみ各3,850円。

静かな佇まいに京都らしさを見るギャラリー。

密やかなビルの奥、黒いトンネルを抜けた先に一転して広がる白い箱、窓の外には石と緑のさりげない庭。そこに路地や町家はないのに、転調する様子に京都らしさを感じさせるギャラリーショップは2019年秋に誕生した。シンプルな空間を印象づけるのは、主張しすぎず空間を切り取る鉄の細いフレームだ。たった2組の枠は意外なほどの存在感で内側に置かれたものを際立たせ、その様子は茶室のミニマムな美に通じている。

二条通りから脇にそれた道の、さらにビルの奥にある。路地奥の町家に入っていくような雰囲気も。

器、洋服、ジュエリーと、並ぶのは「洗練されていて品性を感じること。モダンとクラシックが両立していること」という、オーナー鳥越智子さんの視点でセレクトされた現代作家の作品。陶芸家の渡辺林平や打田翠、白石陽一、木工作家・小倉広太郎、京都にアトリエを構えるブランド〈TALK TO ME〉ら気鋭の顔ぶれが揃っている。たとえ小さくともひとつ手に入れるだけで場の空気を一変させる、力あるものとの出会いを求め、足を運びたくなる場所だ。

・〈間〉

「つるかめ書房」は文芸から海外ミステリー、食や暮らしの本などを揃える。

茶を主役にしたカルチャースポットが誕生。

目指すのは総合芸術といわれる茶道に倣いつつ、カジュアルに茶の湯の心を体感できる文化サロン。茶と共にある時間を楽しむ、新しい空間が作れたら」と、店主でデザイナーの酒井俊明さん。その茶室として見立てた空間は大正時代に建てられた元炭問屋だ。「“継ぐ”をテーマに建てられた当時の形に一度戻した後、現代に適したアイデアを加えるリノベーションをチームを作って行いました」と4か月もの時間をかけて改装。軸となる茶は3人のセレクターと共に、日本各地の個性ある茶葉を選定する。

離れにもカウンターがあり茶を楽しむ空間となっている。

茶農家から直接買い付ける希少なものも含め、100種類もの茶葉を揃えるのは「ワインと同じで作り手や土壌によって味わいが変わるのがおもしろい」から。加えてオリジナルの茶器や和菓子、茶をベースにした香り、茶と共に楽しむ本や音楽を揃える。「様々な分野のプロフェッショナルとチームを作り、茶の湯の精神で豊かな時間の提案ができたら」という言葉に期待が膨らむ。


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