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ホンマタカシが最新作『TOKYO NEW SCAPES』の見どころを解説!

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September 25, 2021 | Culture, Architecture, Design | a wall newspaper

Casa BRUTUS連載のホンマタカシ「TOKYO NEW SCAPES」が一冊にまとまりました。出来栄えのほどをホンマさんに直撃。

国立競技場 この写真集で意図的に繰り返し撮られた東京オリンピックの象徴とも言える国立競技場。

──連載「TOKYO NEW SCAPES」の開始は2015年でしたから、かれこれ6年。実際まとまってみてどうですか?

ホンマタカシ 写真ってやっぱり、時間が大切なんだなと。1週間とか1か月で撮って一冊の本を作るやり方もあるけど、オリンピックまでの6年をちゃんと時間で見せている感じは編集されてますね。

──常に背景にはオリンピックを意識してましたか?

ホンマ もちろん。ボクには東京を撮りたいという意識はいつもあって、そこにオリンピックに向けて、カウントダウンというコンセプトがあると。ただ、新しくできた建物やモニュメントをインスタみたいに撮って並べても、それは記号でしかない。いま、インスタがライバルだから(笑)、そうならないようにしないと。

──どんな工夫を?

ホンマ 空撮とか、国立競技場や富士山の意図的な繰り返しがあったり、あまり意味のないカットが入ったりと、そういうことかな。

──印象に残った東京の風景は?

ホンマ 結果、築地とウォーターフロントは多かったですね。偶然だけど。

──こんなにクレーンが写っている写真集もなかなかないですね。

ホンマ もう二度と撮れない瞬間だから、いいですよね。ただ工事中を絵にするには難しいんですよ。

築地市場 移転問題で揺れた築地市場は移転前の盛況から、取り壊し跡地の再開発、パンデミックまでとさまざまな形で撮られた。

──オリンピックの延期でカウントダウンも1年延びましたが。

ホンマ モチベーションがね(笑)。今となってはもう1年延びてもよかったかも。

──写真についた引用も興味深いです。

ホンマ 歴史に残ったコメントには重みがあって、はっきりとは言っていないけど、時代の無意識がちゃんとあるんです。歌詞とかは特に。ちょっとズレがあるところがいいんです。ドンピシャの模範解答じゃなくて、考えさせられる感じがいいですよね。国立競技場についた「なにか素晴らしいことが起きそうな国立競技場であります」とか、ほんとうにそうだよね。あまりにもいろんなことが起こったし(笑)。

──とても貴重な形で東京オリンピックまでがまとまりましたね。

ホンマ やたらめったら東京の本を出すという戦略がボクの活動にはあって、『東京の子供』、『TOKYO SUBURBIA』などと雪だるま式になってくれたらいいと思っているんです。写真って消費じゃないですか。一回一回使い捨てになってしまわないように。

──連載は今後も続くようですね。

ホンマ 次はふつうの東京の風景を撮ってもいいのかもね。例えばなんでもない代官山の通りとか、そんな東京との関わりがあってもいいかと思うんです。

ホンマタカシ

写真家。雑誌、広告などで幅広く活躍。『TOKYO SUBURBIA』で1998年木村伊兵衛賞受賞。著書に『たのしい写真』、写真集『Looking Through Le Corbusier Windows』など。

ホンマタカシ『TOKYO NEW SCAPES』

国立競技場跡地から始まる、東京オリンピックまでの6年間の連載を、Casa BRUTUSのムックとして刊行。A4変型・中綴じ・全180ページ。マガジンハウス/1,760円。

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