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本物の城に泊まる!? 一日一組の“キャッスルステイ”が話題です。

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July 18, 2021 | Design, Architecture, Culture, Travel | casabrutus.com

長崎県の北西、南北に細長い形をした平戸島と大小約40の島々から成る平戸市。今年4月、1日1組限定で宿泊できる城として〈平戸城 懐柔櫓〉がオープンした。通年、宿泊施設として利用できる城は日本で唯一。

●日本100名城初の常設宿泊施設になった平戸城。

平戸までは長崎市内から車で約2時間、本土から平戸大橋を渡ると平戸島がある。島の中心部、平戸瀬戸を見下ろす高台に立つのが平戸城だ。

古くからヨーロッパ諸国との貿易港として平戸は重要な役割を担ってきた。フランシスコ・ザビエルが長崎で最初に布教をした場所であり、17世紀初めに西洋貿易を日本で最初にスタートして栄えた地でもある。

1704年に着工し14年をかけて落成した平戸城は、明治の廃城令により廃城。1962年に、現在の姿の天守閣と4つの櫓が復元した。その後、平成30年から3年に渡って行われた大規模改修により、櫓のひとつである「懐柔櫓」が日本100名城初の常設宿泊施設へと生まれ変わった。

1階のリビングダイニング。畳スペースもある。ここでの時間を心ゆくまで満喫できるようにと、テレビや時計をあえて置いていない。

設計を担当したのは、〈アトリエ・天工人〉。これまでに、奄美大島のリゾートヴィラ〈ネストアット奄美ビーチヴィラ〉や、喜界島のゲストハウス〈coconedoco喜界島〉など、宿泊施設や商業施設などを手がけるクリエイティブな設計集団だ。

白い外壁と瓦屋根に鯱を飾った威風堂々とした外観はまさに城そのもの、扉の中はモダンで瀟洒な空間に。既存の2階建て躯体はそのまま活用して耐震補強を施した。1階は、天井高3メートルの開放的なリビングダイニングルームとバスルーム。リビングの一角に畳敷きの和のスペースもある。2階は、ダブルサイズのベッドが並ぶベッドルームで、三方向に窓を設けてある。自然光や照明の光の加減で表情が変化する、金箔調特殊塗装塗装の壁を、九州出身の琳派の画家・小松孝英が描き下ろした、蝶、桜、梅が彩る。

三面ガラス張りのバスルーム。湯舟につかると浮かんでいるような気分を味わえる。

バスルームは今回増設したもので、外観の印象を変えないように3面ガラス張りに。海にせり出すような造りで、平戸瀬戸を見渡すことができる絶好の展望スペースだ。湯舟や床には諫早の御影石を用いている。また、建物に隣接して広いウッドスペースが設けてあり、思い思いの時間をここで過ごせる。夕暮れの風景を眺めたり、ヨガやストレッチをしたりと、のんびりとした島時間を体感できる場だ。

食事は、朝食、夕食ともにオプション。ホテルオークラ福岡やパリの五つ星ホテルなどで研鑽を積んだシェフが、平戸の新鮮な海の幸をベースにした創作コースでもてなしてくれる。ほかに、茶道や座禅などの体験プログラムなどの用意もある。

外界とは切り離された完全なプライベート空間で、時空を超え江戸時代へと思いを馳せ、非日常の時間を過ごしてみてはいかがだろう。

〈平戸城キャッスルステイ 懐柔櫓〉

長崎県平戸市岩の上町1446。問い合わせ/狼煙 info@noroshi.org 宿泊料金/1室1泊600,000円(最大5名)、食事は別料金(朝食1名5,000円、夕食1名40,000円)。

●平戸で見るべきデザインスポットは?

海側から見た〈平戸オランダ商館〉。白い壁に緑の窓の色合わせが爽やかだ。

〈平戸オランダ商館〉

長崎の出島よりも以前、日本で唯一のオランダ貿易港として栄えていた平戸に、1609年に建築された〈平戸オランダ商館〉。本館、住居、倉庫などが立ち並ぶ中、1639年に日本初の西洋の石造建築として建てられた倉庫を、2011年に再現したもの。オランダに残っていた帳簿を元に、約20,000個の砂岩切石を積み上げた上に漆喰を塗った美しい白壁の建物だ。

約50センチ四方の巨大な松の柱が建物を支える。

建物の中央には、樹齢700年以上の松の木を使った約50センチ四方の巨大な柱が並び建物を支えている。釘を使わない構造はオランダ本国でも見られる建築様式。屋根には平瓦や丸瓦などを用い、洋風の建築物でありながら日本の建築技術も生かされている。

当時の貿易にまつわる資料として絵図や書物を展示してあるほか、航海用具、オランダから伝わった食器などの日用品や、当時の貿易品として、南蛮漆器や中国陶磁器を展示している。

1639年に建てられた、日本初の西洋建築物を復元。

〈平戸オランダ商館〉

長崎県平戸市大久保町2477 TEL0950 26 0636。8時30分~17時30分。第三火、水、木曜休。

〈平戸ザビエル記念教会〉

1931年に建てられたゴシック様式の教会。向かって正面中央の大塔とその左にのみ小塔があるアシンメトリーな造りで、淡いモスグリーン色が目をひく。

献堂40周年を記念して、聖フランシスコ・ザビエル像が聖堂の脇に建立された。

聖堂の脇に立つ、聖フランシスコ・ザビエル像。

〈平戸ザビエル記念教会〉

長崎県平戸市鏡川町259-1 TEL 0950 22 3060。8時~16時。無休。内部の見学は事前に問い合わせを。

〈平戸大橋〉

本土から平戸島にかかる、平戸大橋。全長665メートルの朱塗りの吊り橋。美しい青色の海と空にひときわ映える。

〈平戸市街〉

木造の商店や民家が立ち並ぶレトロな街並み。平戸の特産品である「カスドース」や牛蒡餅の製造販売店、喫茶店、平戸ちゃんぽんのお店などがある。

〈寺院と教会の見える風景〉

平戸を代表するフォトスポット。平戸の市街地から脇道に入り、石畳の階段をのぼると遭遇する風景。手前に〈光明寺〉と〈瑞雲寺〉があり、奥に〈平戸ザビエル記念教会〉が重なる。

〈生月サンセットウェイ〉

平戸島の北西に位置する生月島は、車で1時間もあれば1周できる小さな島でドライブにおすすめ。海岸間近まで迫る山の風景や美しい水平線がのびる大自然にこころが癒される。放牧されている牛を見ることも。空と海をオレンジ色に染める夕暮れ時の絶景もぜひ。


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