April 24, 2021 | Architecture, Culture, Design, Food, Travel | casabrutus.com
代々木上原駅の閑静な街並みの中でひときわ異彩を放つのが、アジアで一番の美しさと言われるモスクと、トルコの文化を日本に伝える施設が融合した〈東京ジャーミイ・トルコ文化センター〉。伝統的なオスマン・トルコ様式の美しい建物や礼拝堂は、建築的・芸術的にも見所あまた。トルコを旅しているような心地に。
●異国情緒溢れる、代々木上原のモスク。
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宗教哲学について学ぶ姪と、建築的な視点を持ちながら、各地の“祈りの場所”を巡るようになった。そんな中、毎週土・日・祝日の14時30分から、ムスリム(イスラーム教徒)の礼拝の様子も見学できるガイドツアーが開催されていると知り、〈東京ジャーミイ・トルコ文化センター〉を目指す。
通常ならば、モスクに異教徒が入ることはマナー違反だが、1階はホールや売店もある「トルコ文化センター」、2・3階が日本最大のモスク「東京ジャーミイ」として、トルコ共和国宗務庁が設立したこちらの施設は、トルコと日本の文化交流の場として、開館時間内は自由に見学できる。
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典雅なドームとミナレットと呼ばれる尖塔が印象的な外観は、伝統的なオスマン・トルコ様式のデザインを踏襲。外部・内部の装飾には、流麗なアラビア文字や、幾何学紋様、植物紋様、色鮮やかなステンドグラスと、トルコ・イスラーム芸術を代表する工芸作品をちりばめ、息をのむような美しさだ。
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大ドームを中心に6つの半ドームを配した礼拝場の天井は、内部鋳型を用いずに作られていたり、数千年前から受け継がれる技術「ドーム内空室」が音響装置として取り付けられていたり。内外の壁の大理石は特殊な技術で金具のみを使うなど、伝統と最新の技術が自然な形で融合しているのも建築的な特徴。大理石、シャンデリア、絨毯、椅子やテーブル……水とコンクリート以外の建具や装飾品や家具すべて、トルコから運んできたというところにも大きな価値がある。
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トルコを中心にした、ムスリムのためのさまざまな食材や、手作りのお菓子が並ぶ1階の「ハラールマーケット」で買物したり、東京ジャーミイ・トルコ文化センターに隣接する「ユヌス・エムレ トルコ文化センター」内にある、一般利用も可能なカフェでランチを味わったり、地元の人たちの暮らしに根づいているところにも親しみを抱く。言語、料理、刺繍、楽器など、トルコの文化を学ぶ教室も催されており、海外旅行が難しい今こそ受講してみたい。
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〈東京ジャーミイ・トルコ文化センター〉
東京都渋谷区大山町1-19 TEL 03 5790 0760。10時〜18時。(集団礼拝に参加される信徒の方を除き、金曜日の一般の見学は14時〜)。土・日・祝14時30分からはガイドツアーも。 ※モスク内の見学は、撮影や服装など諸注意があります。必ず事前にホームページで確認を。●"奥渋谷"に誕生したアジア屋台食堂。
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昼食は、ベトナム料理店〈ヨヨナム〉の姉妹店で、今年の2月に“奥渋谷”にオープンした〈アジア屋台食堂 ピポンペン〉で。ベトナムの大衆食堂・コムビンザンのようにショーケースにずらりと並んだアジア各国の惣菜から、好きなものを選んで味わえる。オリジナルレシピとともに、植松良枝さん、ごはん同盟さん、小堀紀代美さんなど、料理家によるレシピも取り揃う。例えば、「辣白菜(ラーパツァイ)」「鶏むね肉のチンジャオロース」「玉葱焼売」「台湾風焼そば」と、味わいも彩りも華やかだ。
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メニューは主に3タイプ。「選べるメイン+おまかせお惣菜」と「魯肉飯+おまかせお惣菜」の店内用のワンプレートと、それらを持ち帰り用に盛り付けた「ピポンペン茶弁当」。約一時間掛けて一枚ずつ丁寧に焼き上げるスフレ風の「台湾カステラ」も、すでに奥渋谷の名手みやげとして知れ渡る。
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床の模様に昭和の名残りを感じる店があるのは、代々木八幡駅から渋谷に通じる道沿いのビルの2階。カウンターにテーブル数席とこぢんまりしているが、キッチンから調理の音や匂いが心地よく届き、活気に溢れた旅先のようだ。夕方からはお惣菜を小皿料理として注文できるので、お酒を楽しむのにもちょうどいい。
〈ピポンペン〉
東京都渋谷区神山町40-1 2F TEL 03 6407 8345。11時30分〜15時、16時30分〜23時(営業時間は情勢により変更があります)。不定休。18席。●薪窯で焼きあげるカンパーニュと食パンの店。
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散歩の最後は、2020年の秋にオープンしたばかりの〈パン屋塩見〉に。カウンターのみの店頭に並ぶパンは、「本日のカンパーニュ」と「本日の食パン」の2種類。店主・塩見聡史さんが、日ごとの特徴を黒板に書き出す。
この日のカンパーニュは、「薪窯の特徴が活きるように、ふくらませすぎないようにしています。皮は香ばしく。中はムチっとした食感です。挽きたての無農薬小麦の全粒粉を約45%配合しました。だいぶ暖かくなって発酵は早め。ルヴァン種の風味がよく出ています」。食パンは、「甘みのある北海道の小麦を手ごねすることで、味が濃く残っています。香りづけ程度に入れたバターとルヴァン種の相性が良いです。気温が暖くなり、フワッとした焼き上がりになっています」と、こんなふう。
説明にもあるように、ここならではなのが、手作りの薪窯でパンを焼くこと。薪窯のパン専門店というのは、東京23区内ではとても珍しい。
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小田原生まれの塩見さんは、魚類生態学を学ぶため沖縄の大学に進学した。そこで運命の出会いを果たす。雑誌『BRUTUS』のパン特集で近所の〈宗像堂〉の記事を読み、パンを買いに行ったついでに見せてもらった窯の佇まいに魅せられて、バイトをさせてもらうことに。窯から入ったパンの世界だが、次第に生地に興味が湧き、地元に戻ったのち、天然酵母パンの草分けとして知られる東京・富ヶ谷の〈ルヴァン〉で、製造責任者として修業を積んだ。
自分の店を開くため薪窯を備えることができる物件を探していたところ、代々木の住宅街にあるウェブ制作会社の一角で開業できることに。店舗部分は長野県諏訪市の古材・古道具店「ReBuilding Center JAPAN」との共同制作、厨房や薪窯はパン職人仲間の手を借りながら10ヶ月かけて自ら作り上げた。
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スペースは限られているけれどイートインもできるので、スープとチーズトーストでおやつの時間。屋外席で春の風とともに、むっちり香ばしいパンを噛み締める。今日買った食パンを朝に、カンパーニュは昼に……ああ、明日が待ち遠しい。