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モダニズム建築が主役!? あの名作が映画『コロンバス』に次々登場。

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March 12, 2020 | Architecture, Culture | a wall newspaper

モダニズム建築の街が舞台の映画『コロンバス』が公開。街を彩る名作とともに、本作の見所をご紹介!

Miller House by Eero Saarinen,Alexander Girard エーロ・サーリネン設計の〈ミラー・ハウス〉(1957年)。庭の設計にはダン・カイリーも参加。

エリエルとエーロのサーリネン親子をはじめ、イオ・ミン・ペイ、リチャード・マイヤーら巨匠たちによる名建築が群をなす、アメリカ・インディアナ州の小さな街、コロンバス。この街がこれほど建築に恵まれている理由のひとつは、地元を代表する企業〈カミンズ・エンジン〉の創業者アーウィン・ミラーが1954年に財団を設立し、公共施設の建築費をサポートしたからだ。それにより、多くのモダニズム建築の傑作が生まれることになった。

映画『コロンバス』は、この街の建築を通して登場人物たちの心の機微や成長を描いた作品だ。では、なぜ監督のコゴナダは、このコロンバスという街を舞台に映画を撮ろうと思ったのだろうか。本人に尋ねてみた。

「この街の建築が織りなす空間と、その独特な構造に惹かれたからです。コロンバスへは数年前に家族旅行で訪れたのですが、出会う建築すべてに強く胸を打たれました。モダニズム建築にまつわる希望と追憶の物語が、街そのものに宿っているように感じたのです」

そして、旅行から帰るまでの間に、キャラクターや物語の展開がすでに頭に浮かんでいたという。

Irwin Conference Center by Eero Saarinen エーロ・サーリネンの〈アーウィン・カンファレンス・センター〉(1954年)。

冒頭でエーロ・サーリネンが設計したアーウィン・ミラーの住居と庭〈ミラー・ハウス〉が登場するが、インテリアはアレキサンダー・ジラードが担当。白い空間にカラフルなクッションやオブジェクトが並ぶリビングの様子にまずノックアウトされてしまう。

次に登場するのは、エリエル・サーリネンが設計した〈ファースト・クリスチャン教会〉。コロンバスを代表するサーリネン親子の建築が映し出されることで、物語はゆっくりと駆動していく。

薬物依存症の母親を抱えて、街からなかなか出ることのできない建築好きの少女ケイシー。建築学者の父が倒れたため韓国から街にやってきた韓国系アメリカ人のジン。彼は父との確執から早く帰りたいと思っているが、容態が安定しないため、滞在を余儀なくされている。そんな二人が出会い、共通項である建築を巡りながら語り合うことで、彼らの焦燥や心配、そして希望があぶり出されていく。

建築は他にも、弧を描くアーチが特徴的な〈コロンバス・シティホール〉や、デボラ・バークによる〈ファースト・フィナンシャル銀行〉など、14ものロケーションが登場する。小津安二郎監督を愛するコゴナダ監督が美しい構図で捉えた建築の数々を、ディテールまであますことなく鑑賞したい。

『コロンバス』予告編

コゴナダ

これまでロベール・ブレッソンやアルフレッド・ヒッチコック、小津安二郎のドキュメンタリー映画を撮ってきた韓国系アメリカ人の監督。『コロンバス』が長編初監督デビュー作になる。

『コロンバス』

モダニズム建築の街コロンバスで出会った男女。数日間、共に建築を巡りながら、それぞれの道を見つけていく。出演はジョン・チョー、ヘイリー・ルー・リチャードソン他。3月14日よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開。

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