December 29, 2019 | Travel, Architecture, Culture | MY FAVORITE
神社好きの建築家4人に、マイフェイバリット神社を挙げてもらいました。推薦理由はさまざまですが、みな、その神社に「建物」以上の何かを感じているのは共通しているようです。
●中村拓志 ── 山住神社(京都|岩倉)
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古くから続く磐座信仰の面影を今に伝える。
岩倉の地名は神が降臨する “磐座” の別名。山住神社の旧名は社を祀る巨石がその由来だ。社殿はなくただ岩を祀るのみ。その簡素さがかえって崇高さにつながっている。そもそも神社とは、神が降りる巨石や山などを祀り拝めることにある。ここはその原初性を色濃く残しているところに惹かれる。僕自身、自然崇拝こそ現代人に必要な感性だと信じているからだ。この神社に倣い、岩倉の実家の中庭に祈りのための磐座を設計した。
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中村拓志(建築家)
なかむらひろし 1974年東京都生まれ。2002年、NAP建築設計事務所を設立。地域の風土や産業、地形や自然、そこで活動する人々のふるまいや気持ちに寄り添う設計を信条とする。●原田真宏 ── 青島神社(宮崎|宮崎)
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光に満たされた南国の祈りの空間。
周囲1.5kmの小島に鎮座する神社。陸から島へ渡る直線の道に対して、島にはストライプの白い岩肌が広がっていて、抽象絵画の中に入っていくような感覚を味わう。江戸時代まで一般入島は禁じられていたそうで、聖地といえば暗がりの深閑とした場所にある印象だが、青島は影がなく、むしろ光に満ちている。神話「海幸・山幸」の舞台でもあり、 此此岸から彼岸へ渡った先に光の空間があるという感覚はとてもモダンだなと思う。
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原田真宏(建築家)
はらだまさひろ 1973年静岡県生まれ。芝浦工業大学教授。隈研吾建築設計事務所、磯崎新アトリエを経て、2004年、原田麻魚とともにマウントフジアーキテクツスタジオを設立。●佐野文彦 ── 石上(いそのかみ)神宮(奈良|天理)
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神代とのつながりを感じる記紀に記された宝物庫。
国宝の拝殿は平安時代に移築されたものと伝わるが、所々に鎌倉期の特徴を表す意匠が施されている。スマートな檜皮葺きで神社というより寺のようなプロポーション。柱にぶち抜きの貫があるなど大仏様の要素もある。元々本殿はなく、後方の禁足地を聖地として祀り、記紀に登場する霊剣の数々が埋められていた。明治時代に記述の通り発見され、本殿を建立し奉斎。神代とのつながりを感じられる数少ない場所の一つだと思う。
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佐野文彦(建築家)
さのふみひこ 1981年奈良県生まれ。数奇屋大工として経験を積み、設計事務所などを経て、独立。建築だけでなく、インテリア、プロダクト、現代美術など領域横断的な活動を行う。●加藤匡毅 ── 斎場所大元宮(京都|吉田)
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八角形と六角形の平面形状を併せ持つ社殿。
茅葺き屋根の入母屋造で、八角形の形をした本殿に六角形の後房が張り付いている、ユニークな平面形状の神社。茅葺き屋根に掲げられた千木(先端の尖った部分)は、伊勢神宮内宮正殿と同形の内削ぎと、外宮正殿と同形の外削ぎが共存している。伊勢神宮の造形美と式年遷宮のコンセプトに強く共感する一方で、斎場所大元宮には唯一無二の存在を感じる。この時空を超えた感覚にやられた。境内から眺める京都の光景もいい。
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