December 23, 2019 | Architecture, Art, Design | casabrutus.com
これまでにない表現のアートが次々と生まれているように、美術館も進歩しています。2020年、新しくなってお目見えする美術館を開館日の早い順にご紹介します!
●東京・京橋〈アーティゾン美術館〉1月18日オープン
2015年から休館していた〈ブリヂストン美術館〉が建物も名称も新しくなって帰ってくる。新しい館名の〈アーティゾン美術館〉はアートとホライゾン(地平線)を合成した造語だ。時代を切り拓くアートの地平を多くの人に感じ取ってほしいという意志が込められている。建物は格子になった大きな窓から内部が見える開放的な造り。展示室も〈ブリヂストン美術館〉のおよそ2倍になった。開館記念展『見えてくる光景 コレクションの現在地』は第1部「アートを広げる」と第2部「アートをさぐる」の2部構成。約2800点のコレクションから人気を集めていた印象派などの近代美術のほか、現代美術や日本の古美術など初公開作品31点を含むさらに幅広いラインナップの作品を展示する。古代から現代まで、東西の交流を含む美の歴史の新しい読み方を楽しめる。
●京都・岡崎〈京都市京セラ美術館〉3月21日オープン
1933年に開館した〈京都市美術館〉を青木淳と西澤徹夫が改修、新館の〈東山キューブ〉とともに3月21日にリニューアル・オープンする。歴史的建築である本館は可能な限り保存したうえで、エントランス前の広場は掘り込んでスロープとし、地下から建物に入る大胆な改修となった。以前は展示室として使われていた1階中央部分は自由に行き来できるエリアにしている。本館は「帝冠様式」と呼ばれる、洋風の四角い建物に和風の屋根を載せたスタイル。開館記念として本館では『京都の美術 250年の夢』を、ニュートラルなホワイトキューブの〈東山キューブ〉では『杉本博司 瑠璃の浄土』を開催。また、プレオープニングイベントとして2019年12月21日から鬼頭健吾のインスタレーションや髙橋匡太のライトアップも。時代を超えた多様なアートが楽しめる。
●青森・弘前〈弘前れんが倉庫美術館〉4月11日オープン
およそ100年前に建てられ、シードル工場や倉庫として使われてきたれんがの建物を田根剛がリノベーション、地域の文化創造の拠点となる美術館に生まれ変わらせた。屋根は金色に輝く「シードル・ゴールド」、内壁は漆喰を剥がして、元のれんがを見せるようにしている。床にもれんがが敷かれ、時間の流れを感じさせる。開館記念展 『Thank You Memory ー醸造から創造へー』展ではジャン=ミシェル・オトニエル、畠山直哉、奈良美智ら8名の作家が登場。弘前の地や、この建物からインスピレーションを得た作品を展示する。
●東京・六本木〈サントリー美術館〉5月13日オープン
隈研吾の設計で2007年に移転オープンした〈サントリー美術館〉はリニューアルのため休館し、2020年5月に同じ隈研吾の改修設計で再オープンする。エントランスやショップ、カフェのデザインが変わるほか、天井の耐震強化やLED照明の導入などさらに安全に、また美術品の姿をよりリアルに堪能できる工夫がされる。リニューアル・オープン記念として5月〜7月の『ART in LIFE, LIFE and BEAUTY(仮称)』など12月まで3本の展覧会を開催。昔の人の生活を彩った優品や、古の人々の美の愉しみ方、古今東西の美を「結ぶ」ことで新しい発見を「ひらく」展示など、同館のコレクションである日本美術の新たな顔を見せる。
●東京・新宿〈SOMPO美術館〉5月28日オープン
1976年に開館した〈東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館〉が〈SOMPO美術館〉として新築の建物でオープンする。丸みを帯びた形が印象的な建築には3〜5階が展示室、2階にミュージアムショップと休憩スペースが入り、1階は東西に抜けられるオープンスペースが設けられる予定だ。前庭にはゴッホ《ひまわり》の陶製複製画が飾られる。5月の開館記念展I「珠玉のコレクション――いのちの輝き・つくる喜び」ではそのゴッホ《ひまわり》のほか、修復が済んだ山口華楊の大作《葉桜》などを展示。7月の開館記念展II「秘蔵の東郷青児――多才な画家の創作活動に迫る」では同館所蔵の東郷青児コレクションから代表作や下絵などを見せる。西新宿の高層ビル街に生まれるアートのオアシスが楽しみだ。
●フランス・パリ〈ブルス・ドゥ・コメルス〉6月オープン
パリ、〈ルーブル美術館〉にも近いエリアに安藤忠雄が改修設計を担当した美術館〈ブルス・ドゥ・コメルス〉がいよいよオープン。ケリング・グループの創業者であり、一大アート・コレクターであるフランソワ・ピノーの美術館だ。元の建物は18世紀に建てられた商品取引所。安藤は円形の建物の外観はほとんど変えず、内部に高さ10メートル、直径30メートルのコンクリートの筒を挿入して入れ子の構造とした。観客は円形の壁に沿って設けられた階段などを通じて行き来する。ガラスのドーム天井やそれを取り囲む、世界各地の貿易の様子を描いたフレスコ画などは、建物の歴史と記憶に敬意を表してそのまま残される。華のある歴史的建造物でマーク・ロスコや村上隆などピノー・コレクションがどんな顔を見せるのか、楽しみだ。
●千葉〈千葉市美術館〉7月11日オープン
区役所と同じビルに入っているちょっと変わった美術館だったが、区役所が移転、空いたフロアが新しく美術館のエリアになる。現状7、8階にある展示室に加えて5階にコレクション展示室と「つくりかけラボ」が、4階に図書室「びじゅつライブラリー」と「みんなでつくるスタジオ」が作られることになった。中でもユニークなのが「つくりかけラボ」。アーティストを招いてインスタレーションの公開制作を行い、滞在制作終了後もワークショップの参加者によって空間が変化し続ける、いつまでも「つくりかけ」な場だ。1〜2階にある、昭和2年に建てられた旧川崎銀行千葉支店の建物を修復・保存した「さや堂ホール」は美術館のエントランスになる。リニューアル・オープン記念展は『ジャポニスム—世界を魅了した浮世絵』。19世紀末から20世紀初頭の西洋の美術家が「浮世絵の何に惹かれたのか」を分析する。
●金沢〈国立工芸館〉7月オープン
東京・竹橋にある〈東京国立近代美術館工芸館〉が通称〈国立工芸館〉として金沢に移転・開館する。〈国立工芸館〉の建物は明治期に建てられた旧陸軍の〈第九師団司令部庁舎〉と〈金沢偕行社〉が移築・活用される。両方とも、1997年に国登録有形文化財に登録された由緒ある建造物だ。移築にあたってはケヤキ造りの階段などの建物の意匠や外観の色を復元するなど、建設当時の姿を再現している。漆芸家・松田権六氏の工房を移築・再現し、同氏の足跡を紹介するコーナーも設ける。東京からは重要無形文化財保持者(人間国宝)や日本芸術院会員の作品約1,400点をはじめ、およそ1900点以上の美術工芸作品が移転する。伝統工芸が盛んな石川県で、日本の工芸の粋がさらに磨かれることになるだろう。