December 18, 2019 | Architecture | a wall newspaper
スティーブン・ホールの世界巡回展が日本上陸! 美しいスケッチと模型、映像で彼の秘密に迫る。
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ニューヨークと北京を拠点に72歳の今も精力的に活動する建築家、スティーブン・ホール。日本では13年ぶりの個展に合わせて来日した。
会場で目をひくのはホールが毎朝描いているという水彩画と、模型の数々だ。彼の事務所では一つのプロジェクトが出来上がるまでにたくさんの模型とスケッチが作られる。その過程でホールがもっとも重視しているのが自然光や水とのかかわりだ。
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「自然光が入らない場所でコンピュータのスクリーンだけを見ているような生活では、自然との精神的な深いつながりや健康的な生活を失ってしまう。また水は人間の体の4分の3を構成する重要な要素だ。だから僕のプロジェクトでは必ず、自然光と水を取り入れるようにしている。建築には自然とアートとサイエンスをより合わせることが大切なんだ」
彼のこういった哲学は建築や庭に対するアジアの考え方からインスパイアされているのだという。
「松尾芭蕉のように自然と庭、詩とのつながりに強く惹かれる」
彼の建築では木も重要な役割を果たす。「季節によって姿を変えるところが好きなんだ」という。
「とくに好きなのはイチョウの木だ。アジア原産だけれど世界中、どこにでもあるミステリアスな木なんだ。ワシントンのパフォーミングアーツのための施設〈ケネディセンター〉にはケネディが第35代の大統領だったことにちなんで、35本のイチョウを植えた。今の季節は金のような黄色の葉が落ちて、ほんとうにきれいだよね」
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子どもの” は画家を目指していたのだそう。
「9歳のときに描いた絵を、母に手伝ってもらって子ども絵画コンクールに出したらブルーリボン(1等賞)をとったんだ。それですっかりうぬぼれた(笑)」
今回は2014年、高松宮殿下記念世界文化賞のために来日して以来5年ぶりの来日だ。日本にはとくに親しみを感じているという。
「僕の父は戦後、日本に駐留していて、帰国するときにタンスにいっぱい着物や皿、箸、下駄や足袋なんかを入れて持ち帰ってきた。もちろんそのときは僕は日本に行ったことはなかったけれど、心はいつも日本にあったんだ」
展覧会場ではプロジェクトをホール自らが説明する貴重な映像も流れている。日本をとくに愛する彼の思いがどのようにして詩的な建築に結実するのか、スケッチと模型、映像とで確かめられる。
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スティーブン・ホール 1947年アメリカ生まれ。主な作品に〈キアズマ現代美術館〉(1998年)、〈MITシモンズ・ホール〉(2002年)、〈ネクサスワールド:福岡〉(1991年)など。