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新年のスタートは、美術館&博物館で!

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December 26, 2019 | Art, Architecture, Design | casabrutus.com

新しい年の始まりはミュージアムで。すがすがしい空気とともに、アートもひときわ美しく見えます。年始に開館している美術館・博物館で気持ちもひきしまるお正月を迎えましょう。

●ポーラ美術館『シュルレアリスムと絵画』大晦日、元旦もオープン!

「シュルレアリスムと絵画」展示風景。エルンスト《博物誌》を拡大した穴あきのパネルが出迎える。 photo_Ken Kato

フランスで生まれた「シュルレアリスム」はもともと、理性や意識では捉えきれない新しい現実を表現する用語だったが、日本では現実の外にある幻想的な世界を表すものとして受け入れられた。『シュルレアリスムと絵画』展はフランスから日本へと輸入されたシュルレアリスムがどのように変遷していったか、その歴史をたどるもの。キリコ、エルンスト、ダリらフランスの作家と三岸好太郎、古賀春江、瑛九など日本の作家を対比する。箱根の森に囲まれた美術館でシュルレアリスムの諸相を見よう。

●彫刻の森美術館『箱根ナイトミュージアム』大晦日、元旦もオープン!

髙橋匡太《Glow with Night Garden Project in Hakone》。色が変わる提灯と散歩しているような気持ちに。 photo_Mito Murakami

野外に置かれたヘンリー・ムーアやニキ・ド・サン・ファールらの彫刻や庭園を、髙橋匡太によるライトアップで照らす『箱根ナイトミュージアム』は1月5日まで無休で開催中。3回目になる今年は無線で色をコントロールできるLED提灯で彫刻邸園を巡る。周囲のライトアップの色に合わせて提灯の光が変化する仕組みだ。夜の彫刻邸園で光のドローイングをするような体験ができる。今年はライトアップエリアがさらに拡大され、18時までは2019年7月にリニューアルオープンしたピカソ館も鑑賞可能。これまでに行ったことのある人も違う気分で楽しめるはず。

●森美術館『未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命─人は明日どう生きるのか』大晦日、元旦もオープン!

ミハエル・ハンスマイヤー《ムカルナスの変異》 2019年 展示風景より。撮影:木奥惠三、画像提供:森美術館。イスラム建築に見られる単純な幾何学模様を参照、コンピュータによって人の手では作れないデザインを生み出した。

急激に発達するテクノロジーや社会の変化に振り回されているようにも思える現代。そんな難しい状況に対してアートや建築に何ができるのかを問う。高層ビルの緑化計画、地球温暖化による海面上昇に備える海上都市、内臓をモデルにした服、ゴッホの親族のDNAから再生したゴッホの耳、来場者どうしの顔を映し出してマッチングするインスタレーションなど、アート・建築とサイエンスの間を橋渡しするプロジェクトが未来の私たちの姿を示唆する。澄んだ空気の下に広がる東京の街を眺めながら見るのにふさわしい展示だ。

●中村キース・ヘリング美術館『Keith Haring: Humanism -博愛の芸術-』大晦日、元旦もオープン!

〈中村キース・ヘリング美術館〉外観。

一部の富裕層のためではなく、すべての人のためのアートを。キース・ヘリングはそんな考えから地下鉄構内にグラフィティを描き始めた。彼はニューヨークを拠点に、世界中で子ども病院に作品を寄贈したりエイズ予防啓発や反アパルトヘイトのポスターを手がけるなどの活動もしている。『Keith Haring: Humanism -博愛の芸術-』では彼が貫いた人道主義が表れている作品を展示する。合わせて開催中の『VIRAL』はグラフィティ文化に影響を受けた大山エンリコイサムの個展。「ウィルス性の」「(SNSなどでの)拡散」という意味を持つ語「VIRAL」から着想した作品が並ぶ。北川原温が設計した個性的な美術館建築も見どころのひとつだ。

●上野の森美術館『ゴッホ展』1月2日からオープン

フィンセント·ファン·ゴッホ《糸杉》1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館 Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY

37年の短いけれど劇的な生涯が多くの人を惹きつけるゴッホ。この展覧会ではゴッホの画業の転換点となった「ハーグ派」と「印象派」の2つのムーブメントとの関わりに光をあてる。画家マウフェらハーグ派からは専門的な技術と農民の暮らしに寄り添う姿勢を学んだ。パリで出会った印象派の画家たちからは明るい色彩と大胆な筆致を取り入れる。会場には手紙でのやりとりなども紹介され、独自の表現に向かって苦闘する彼の姿が浮かび上がる。《糸杉》《麦畑》《薔薇》とゴッホが渾身の力で描いた傑作も見逃せない。

●十和田市現代美術館『AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき』1月2日からオープン

《十和田市現代美術館》外観。

生き物とのコラボレーションによって思いがけない造形を生み出すAKI INOMATA。3Dプリンターによって作った世界都市のミニチュアをやどかりの“殻”にしてもらう、女性の服を端布をミノムシにまとってもらうといった作品は、普段私たちが気づいていない人間以外の生物との関係性を意識させる。展覧会タイトルの「Significant Otherness(重要な他者性)」とは科学史家ダナ・ハラウェイが提唱した、地球上の生物種の共生関係を見直そうというコンセプト。十和田にゆかりのある南部馬をテーマにした新作も並んで、さまざまに視野が広がる展覧会だ。美術館は西沢立衛の設計。館の内外に広がる草間彌生やチェ・ジョンファらの恒久設置作品も面白い。

●江戸東京博物館『大浮世絵展』1月2日からオープン

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》 江戸時代/天保2-4年(1831-33)頃、横大判錦絵 東京都江戸東京博物館蔵 展示期間:2019年12月17日~2020年1月19日(東京会場)

2014年、開館20周年記念として開かれた「大浮世絵展」の第2弾となるこの展覧会では、葛飾北斎ら江戸を代表する5人の浮世絵師をピックアップ。美人画、とくに大首絵(バストアップ)で人気を博した喜多川歌麿、デフォルメした役者絵で一世を風靡したものの、その正体が今もわからない東洲斎写楽、今も世界を魅了する「冨嶽三十六景」で風景画の新境地を切り開いた葛飾北斎、旅心を誘う「東海道五拾三次」をヒットさせた歌川広重、巨大な骸骨など“奇想”の浮世絵を次々と描いた歌川国芳と、それぞれに個性豊かな絵師たちが競演する。

●大倉集古館『能と吉祥「寿―Kotohogi―」』1月2日からオープン

〈大倉集古館〉外観。

谷口吉郎によるホテルオークラのロビーをそのまま残したデザインでリニューアルオープンした〈The Okura Tokyo〉。敷地内にある伊東忠太設計の〈大倉集古館〉も元の姿で戻ってきた。見た目はほとんど変わらないけれど地下1階を増設、免震層も設置して収蔵品をより大切に守る。お正月には新年にふさわしい松竹梅や宝尽くし、扇など吉祥文様をあしらった能装束や工芸を展示する。中でも近年収蔵された鈴木守一《石橋・牡丹図》はこの展覧会が初公開。国宝の《普賢菩薩騎象像》も特別公開される。華やかな意匠が年の始まりを彩る。

●福田美術館『開館記念 福美コレクション展』1月2日からオープン

大堰川対岸の桜越しにのぞむ〈福田美術館〉。

2019年10月、京都・嵐山に開館した〈福田美術館〉は江戸時代から近代まで主要な日本画家が中心の1500点に及ぶコレクションを有する美術館。中でも京都画壇の画家たちに力を入れている。開館を記念して開かれている『福美コレクション展』ではその中から横山大観《富士図》、伊藤若冲《群鶏図押絵貼屏風》のほか円山応挙、竹久夢二、狩野探幽、長沢芦雪など幅広いラインナップが並ぶ。渡月橋の近くに建つ建物は安田幸一の設計。伝統的な京町家のエッセンスを取り入れた美術館建築も楽しみたい。

●国立西洋美術館『ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史』1月2日からオープン

《ハート形の容器》中央アメリカ(メキシコ?)あるいはインド(グジャラート?)、 16世紀 (容器)/ イベリア半島、1580年頃(台)  鼈甲、銀 ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien

13世紀末にオーストリアに進出、第一次世界大戦後までヨーロッパ各地で広大な領土を支配したハプスブルク家。この展覧会はベラスケスが描いたマルガリータ・テレサやフェリペ4世、ヴィジェ=ルブランが描いたマリー・アントワネットら8人の王族にフォーカス、彼らが集めた芸術の数々を見せる。ジョルジョーネ、ヤン・ブリューゲル(父)、デューラーらの絵画のほか、甲冑や杯など工芸品も。600年にわたって受け継がれてきた美意識の世界にひたれる。

●東京国立近代美術館『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』1月2日からオープン

藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》。窓のみでできているような“家”が前庭に建てられている。 photo_Masanori Kaneshita

「窓」をテーマにアート、建築とジャンルを横断して作品をセレクトした展覧会。前庭の藤本壮介のインスタレーション、ゲルハルト・リヒターの立体作品、マティスやデュシャンらが窓をモチーフに制作した絵画やオブジェ、さらにはデュシャンへのオマージュとして制作されたナム・ジュン・パイクのパートナー、久保田成子の作品など、時代もジャンルも幅広い。学術協力は建築史・建築批評家の五十嵐太郎。窓とアート、建築を巡る年表も必見だ。

●京都国立博物館『子づくし─干支を愛でる─』他 1月2日からオープン

《黄交趾釉俵鼠置物》永楽妙全作 京都国立博物館蔵

来年の干支は先頭となる鼠。ともすれば嫌われがちな動物だけれど、日本美術には愛らしい姿で登場する。鼠は大黒天の使いとされ、また多産であることから子孫繁栄の願いも込められた。江戸時代には愛玩動物としてかわいがられたという。展覧会には土佐光吉による源氏物語画帖や仏涅槃図、簪(かんざし)、根付、印籠、置物、人形などさまざまな形で表現された鼠が登場する。小さな動物に向けた視線が愛おしい品々だ。

●東京国立博物館『人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-』1月2日からオープン

ふたりの人が抱き合う姿の《飾り板》。古代のデザイン感覚が面白い。金、カーネリアン、瑪瑙 中央アジア 前2千年紀中頃

「ザ・アール・サーニ・コレクション」はカタール王族のシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下が収集した古代から近現代までのコレクション。この展覧会では「人」「神」「自然」のテーマにわけ、古代の美術工芸品117件を紹介する。写実的なものから抽象化されたもの、目や眉を強調したユニークな仮面、人やクマの形の容器、牙をむいて威嚇する動物の鼻飾りやリラックスした表情で頭をかくクマの置物など、多彩な造形感覚に潜む神や自然への畏敬の念が伝わってくる。


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