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京都・祇園の泊まれる数寄屋〈そわか〉の建築を大解剖。

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May 4, 2019 | Architecture, Design, Travel | casabrutus.com

元料亭の数寄屋建築を改修した本館に加え、モダンな新館も完成! 建築家と総支配人が語る、スモールラグジュアリーホテル〈そわか〉の魅力とは?

2019年3月にグランドオープンした〈そわか(SOWAKA)〉。元料亭の数寄屋建築をリノベーションした本館11室、和風の現代建築の新館12室。計23室がすべて異なるデザインという、趣向を凝らした客室が特徴だ。

〈そわか〉外観。

それぞれの客室の魅力や滞在のヒントを、設計を手がけた建築家の魚谷繁礼(うおやしげのり)と〈そわか〉総支配人の矢島泰介に聞いた。

「元々の料亭は、茶室研究で知られる中村昌生さんの著作『数寄屋建築集成』で詳しく紹介された名数寄屋建築です。そこで取り上げられている部分は、細部まで残すことにしました」(魚谷)

たとえば「108 ガーデンビュー スイート」では、七宝繋(しっぽうつなぎ)の模様がリズミカルに入った欄間、格狭間形(こうざまがた)の塗り縁の窓、格天井(ごうてんじょう)といった数寄屋の意匠が丁寧に残されている。

かつて「ほら貝の間」と呼ばれた「108 ガーデンビュー スイート」。七宝繋の透かし模様の入った欄間、格狭間形の塗り縁の窓、床など凝った意匠の数々が残る。長押(なげし)は北山丸太でこの長さのものは希少。

使われている素材や仕上げからは、料亭時代の部屋の格式がわかるそう。例えば、床柱の場合、格式が高い空間では柾目(まさめ)の角材が使われるが、磨き丸太、面皮柱(めんかわばしら)……と仕上げの加工度が低くなるほど、そこがカジュアルな空間であったことを意味する。しかし格式の高い空間がそのままラグジュアリーな部屋になるかというと、そうではない。

「例えば、『107 名栗壁(なぐりかべ)』のお部屋はかつて大広間で、格式の高い四方柾(しほうまさ)の床柱が立っています。しかしこの仕上げは宿の客室としては堅苦しい印象になるので、あえて存在感のある名栗壁のベッドボードを設えて柔らかさを出しています」(矢島)

2階大広間を改修した「107 名栗壁」。電気配線などは名栗壁のベッドボードに仕込み、既存の壁や天井を極力残している。名栗壁の向かいには、四方柾の床柱を備えた床の間がある。

ちなみにこの建物、数寄屋の意匠をこれだけ残すのは、本来ならば難しかったそう。宿泊施設への用途変更に求められる防災建築基準法上の現行基準を満たせないからだ。しかし京都市による建築基準法の適用除外規定を受け、改修の工夫で基準と同等以上の安全性を確保することで、細部を残すことができた。

「床や天井、壁の仕上げを変えずに設備を整えるのは大変でした。床暖房やエアコンダクト、スプリンクラー、鉛の防音シートなどを既存の意匠を壊さないように丁寧に入れ、限られたスペースに水まわり設備を納めています」(魚谷)

2つの専用庭がある「101 プライベートガーデン付」。坪庭を眺めながら湯船に浸かるなど、さまざまな過ごし方ができそう。

建物そのものは古いが、客室は静かで、寒い時期でも暖かく快適だ。それを実現するためには並々ならぬ設計の工夫があったようだ。続いて、新館を見てみよう。

「211 坪庭ビューバス 東山ビュー」。突き出した窓からは、祗園閣がみえる。

特徴は、祇園の中心とは思えない眺めのよさ。しかも坪庭が見える客室、伊東忠太設計の塔〈祗園閣〉が見える客室、バスルームから街並みを見渡せる客室など、眺望は多様だ。

その眺望の背景には、「客室と客室の間に庭を設け、すべての客室に大きな開口部と独立性を確保しました」と魚谷が言う、プランの工夫がある。建物は鉄筋コンクリート造だが、おだやかな土壁や、光を反射する大津磨きやスチールといった素材を使い分け、庭の光や緑を引き立てる空間となっている。

新館の完成とともに登場したのが、併設レストラン〈ラ・ボンバンス 祇園〉だ。西麻布の名店が京都に進出。日本の伝統を踏まえながらも自由なアレンジが施された、数寄屋建築ともどこか共通する華やかな食事を楽しめる。

〈ラ・ボンバンス〉内観。

「建築、造園、家具やアートワーク、職人、家具、アメニティまで京都のものをメインに揃えました。〈そわか〉を通じて京都の歴史や文化を世界に紹介できればと思っています」と矢島。京都の上質なものが集約された小宇宙で、ゆったりと過ごしてみたい。

〈そわか(SOWAKA)〉

京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル清井町480 TEL 075 541 5323。全23室。1泊1室30,000円〜(税・サ別)。

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