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店舗デザインは森田恭通!〈フランフラン〉新ブランドのショップが祇園に。

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December 4, 2018 | Design, Architecture, Travel | casabrutus.com

〈フランフラン〉の新ブランド〈Master Recipe〉初のショップがオープン。京都・祇園の目抜き通りに、森田恭通が手がける町屋風建築が誕生した。

photo_ Nacasa&Partners Inc.

〈Master Recipe〉は、インテリアブランド〈フランフラン〉が2017年にスタートさせた、新たな商品ライン。信楽焼や有田焼、今治のオーガニックコットンタオル、またフランス・アンティーブのフレグランスなど、国内外を問わず、世界各地で培われてきた上質なクラフトを、現代人の生活にもマッチするような新たなデザインで生み出している。

日常使いに適した磁器のシリーズ。薄くて軽い一方で、1,300度の高温で焼成されるため、陶器よりも硬く丈夫。中央の《有田 大皿 結びL》3,200円。

祇園にオープンした初のショップには、〈Master Recipe〉のオリジナルプロダクトはもちろん、ブランドのフィロソフィーに適うような工芸品を、世界約20か国から収集。食器やファブリック、アクセサリー、オブジェなど、550ほどのアイテムが並んでいる。店舗設計は、〈フランフラン〉では過去に青山店、名古屋店も手掛けている、GLAMOROUS co.,ltd.の森田恭通。

森田 〈フランフラン〉の髙島郁夫氏とインテリアについて色々と話すなかで、〈Master Recipe〉という新しいサジェストをしたいという話は、以前から聞いていました。そんななか、たまたまこの京都の祇園というふさわしい場所に物件が見つかり、僕がデザインを考えましょうか、ということになった。僕にとって、京都といえば祇園、祇園。そして祇園。普段からよくお邪魔させていただいている街です。きちんとこの地域に溶け込めるように、外観では“我を出す”ことはせず、ひっそりと収まるようにしました。ですが、ヨーロッパの街並みと同じように、外観が統一されることで、かえって店内の個性が活きてきます。

店内に入るとなんといっても目を引くのが、中央吹き抜け空間に吊られている、扇子を使ったモニュメントだ。

森田 建物自体は広くはないんですが、二階を作ることができたので、じゃあ吹き抜けはどうかな、と。吹き抜けがあることで、二階にも商品があることがお客さんに伝わります。そうした時に、なにかシンボルになるものが欲しいと思った。せっかくなので僕の大好きなアーティスト、カルダー(=アレクサンダー・カルダー。モビール彫刻で知られるアーティスト)へのオマージュとして、“モリダー”を作りました。白竹堂という京都の扇子屋さんのものを使わせていただいて、僕がデザインしています。

二階の天井から一階まで届く、扇子を使ったモビール状のモニュメント“モリダー”。photo_ Nacasa&Partners Inc.

森田らしい個性が光る一方で、全体としては落ち着いたトーンを保っている。その絶妙なバランスを支えているのは、ディティールに宿る意匠だ。

森田 “主張しすぎないこと”を心がけました。いつもだったら自分がやるような試みも、一つ手前でペンを置くようにしました。まぁ、“モリダー”は作っちゃったけどね(笑)。デザインは、シンプルであればあるほど難しい。商品自体は繊細で小さいものも多いので、それらがきちんと浮かび上がってくるように、細かいところに気を配りました。

特徴的な壁面の陳列棚は、曲線的な窪みのなかに、直線的な白木の什器が、まるで宙に浮かぶようにして設けられている。

森田 日本の建築の基本的な要素というとやはり直線ですが、それを曲線で柔らかく包み込んだようなイメージですね。そうすることで、直線がより効いてくるんです。照明に関しては、もちろん商品に直接注ぐ光も必要ですが、基本照明の数をできる限り抑えました。什器の裏側につけたライトによる間接照明の、膨張するような、柔らかな光で商品を見せています。

二階に上がると、一階のモルタル素材の床とは足元の感触が異なるのに気がつく。

森田 二階は、ヨーロッパ産の重歩行用の素材を使って、畳風に仕上げています。音を吸収してくれるので、ハイヒールで歩いてもコツコツしないんです。音は、大切ですよね。和の空間っていうと白木の床を考えがちなんですけど、商品を見ているときに足音が響くのは避けたかったので。

壁面の棚も、今回の店舗ために新たにデザイン。漆喰の壁に曲線的な窪みを空け、そのなかに白木の什器を設置している。什器の裏側にはライトが誂えられており、間接照明となって商品を浮かび上がらせる。photo_ Nacasa&Partners Inc.

和を基調にしながらも、それに囚われることはないインテリアデザイン。伝統に対してリスペクトを持ちつつも、その魅力を換骨奪胎し、現代に即した形で新たに提示するそのマインドは、店内に並んでいる多種多様なクラフトの作り手たちと、同じ視線に立ったものになっている。

森田 僕自身、日常生活で使いたいものや、ギフトとして贈りたいものがたくさんあります。こういう使いたくなるような伝統工芸って、あるようでいて、なかなか見つからないんですよね。実際に手にとって商品を見てもらって、通販では感じられないものをぜひ体験して欲しいと思います。…いいこと言ったね、いま(笑)。

《駿河竹細工》5,500〜16,000円。産地/静岡県。作り手/神谷惠美。現在10数人しかいない駿河竹細工職人のなかで、唯一の女性であり最年少の作り手によるもの。

〈Master Recipe 京都祇園店〉

京都府京都市東山区祇園町南側570-125 TEL 075 551 7100。11時〜19時。不定休。

森田恭通

もりたやすみち GLAMOROUS co.,ltd代表/デザイナー。国内外で活躍する、日本を代表するデザイナー。著書に物件集『GLAMOROUS PHILOSOPHY NO.1』が。パリで写真展「Porcelain Nude」を継続して開催するなど、アーティストとしても積極的に活動。

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