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プラダの建築展が上海で開催中! |石田潤の In the mode

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October 27, 2017 | Fashion, Architecture, Travel | casabrutus.com | photo_Keisuke Fukamizu(Rong Zhai) text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano

OMA、ヘルツォーク&ド・ムーロンとタッグを組んだ建築物で、ファッションと建築の新たな関係性を作り出してきたプラダ。その一連のプロジェクトをまとめた展覧会が、上海に誕生した〈PRADA Rong Zhai〉で開催中だ。

プラダの最新建築プロジェクト〈PRADA Rong Zhai〉。

ファッション界で最も革新的な建築のプロジェクトを行ってきたブランドを挙げるなら、プラダをおいて他にはないだろう。OMA、ヘルツォーク&ド・ムーロンといった先鋭的な建築事務所と深く関わりながら、革新的な建築物を作ってきたプラダ。その一連のプロジェクトを振り返る展覧会が、中国・上海で幕を開けた。

〈PRADA Rong Zhai〉は上海の高級住宅街である静安地区にある歴史的建造物。

会場となったのは、プラダの最新建築プロジェクトともなる〈PRADA Rong Zhai(榮宅)〉だ。〈PRADA Rong Zhai〉は、20世紀初めに建てられた歴史的建造物であり、1920年代から30年代にかけてこの邸宅に暮らした大実業家、榮宗敬(えい そうけい)氏に敬意を払い、この名称が付けられた。

1910年に設計された建物は、18年に榮氏の手に渡ると増築が行われ、中国独自のデザインにアールヌーヴォーやアラビックなど古今東西の要素を取り入れた折衷主義的な内装がほどこされた。その後、建物は中国共産党の事務所や最近ではルパート・マードックの事務所として用いられたが、約6年前にプラダが取得すると大規模な修復工事に取り掛かった。榮氏時代の建物を復元すべく、イタリアと中国の職人が協力し、緻密な修復作業が行われたのだ。

〈PRADA Rong Zhai〉には古今東西のデザインが共存する。

建築展では、このRong Zhaiのプロジェクトを含めプラダの7つの建築プロジェクトの模型が展示されている。キュレーターを務めるデザインスタジオ〈2×4〉のマイケル・ロックは、「プラダの建築プロジェクトは2つの流れに分けられる」と分析する。

「一つはOMAやヘルツォーク&ド・ムーロンとともに行ってきたアバンギャルドで実験的な建築とセットデザイン。もう一つはミラノの〈ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレII世〉にあるプラダ最初の店舗、ヴェニスの〈プラダ財団—カ・コルネール・デッラ・レジーナ〉、そして〈PRADA Rong Zhai〉に見られる歴史的建造物のリノベーションです。保存と新たな建物の創造という対照的な二つの流れがプラダの建築プロジェクトには共存するのです」

展示された模型。奥は〈ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレII世〉、手前は〈PRADA Rong Zhai〉。

そして、この二つの流れを統合するのが、ミラノで進行中の〈プラダ財団〉だ。〈PRADA Rong Zhai(榮宅)〉で展示中のプロジェクトを通して、プラダの建築ヒストリーについて改めて振り返ってみよう。

●建築家とタッグを組んだ革新的プロジェクト。

2001年竣工の〈プラダ ニューヨーク・エピセンター〉。設計はOMA。

プラダの建築プロジェクトが注目されるきっかけとなったのが、2001年にオープンしたOMAによるショップ〈プラダ ニューヨーク・エピセンター〉だ。

震源地(=エピセンター)と名付けられた店舗は、文字通りファッション建築の世界に大きな衝撃をもたらした。OMAの長年に渡るコラボレーターでもあるロックは、当時について次のように振り返る。

「ミセス・プラダ(ミウッチャ)がOMAのレム・コールハースに依頼したのは、いわゆるプラダ的でないものにしてほしいということでした。ブランドのクリエイティビティを前面に出した、プラダのマニフェスト的店舗にしてほしいと頼んだのです」

ソーホーにある歴史的建造物を改装した店舗は、最新テクノロジーを用いたディスプレイやカルチャーイベントを行うステージも兼ね備えた大胆なデザインが話題を集めた。OMAはその後も、〈プラダ ロサンゼルス・エピセンター〉や展覧会『ウエイスト・ダウン』、プロジェクト・スペース「トランスフォーマー」のデザインも手がけることとなる。

OMAによるエピセンターの第二弾、〈プラダ ロサンゼルス・エピセンター〉は2004年竣工。

そしてOMAと並ぶもうひとつのコラボレーターが、2003年オープンの〈プラダ 青山・エピセンター〉を設計したヘルツォーク&ド・ムーロンだ。

2003年竣工のヘルツォーク&ド・ムーロンによる〈プラダ 青山・エピセンター〉。

ダイヤ型のガラスが構造兼ファサードとなった建物は、完成するや否や東京のアイコニックな建築物のひとつとなった。ヘルツォーク&ド・ムーロンは、2015年に〈プラダ 青山・エピセンター〉の斜め向かいにオープンした〈ミュウミュウ 青山〉の設計も担当している。

●歴史的建造物の修復を通して得られるもの。

18世紀のパラッツォを改装した〈プラダ財団—カ・コルネール・デッラ・レジーナ〉はヴェニスの主要なアート施設の一つに。

プラダの歴史的建造物のリノベーションプロジェクトは、2011年にヴェニスにオープンした〈プラダ財団—カ・コルネール・デッラ・レジーナ〉に始まる。

ヴェニスの心臓部とも言えるグラン・カナル沿いにある18世紀のパラッツォを修復し、プラダ財団によるアートの展示スペースとしてオープンした。そして2014年には、ミラノの〈ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレII世〉修復を支援する大プロジェクトに着手する。

世界最古のショッピングモールであるガレリアは、創業者であるマリオ・プラダが1913年に最初の店舗を開いた地でもある。修復は13か月にわたり、プラダは同時に店内に創業当時を思わせるマホガニーの棚の設置などをおこなった。2016年には、ガレリア内に写真を中心に展示するギャラリー施設〈Osservatorio〉も開設している。

〈ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレII世〉の中心部に位置するプラダの第一号店。

ロックは、〈PRADA Rong Zhai〉も含めた一連のリノベーションプロジェクトは、プラダにとって深い学びの場と位置付ける。

「当時の写真や図面を通して表面的に学ぶだけでなく、その場所がどのように作られたのか、用いられていたのかを知る絶好の機会となるのです」

ミラノの〈プラダ財団〉。黄金に輝く〈ホーンテッド・ハウス〉(右)は既存の建物に24金の金箔を覆った。

そして、リノベーションと新たな建物の建設、過去と未来という二つの要素を兼ね備えたプロジェクトが、ミラノで進行中の〈プラダ財団〉だ。元蒸留酒醸造所であった施設をベースに、OMAが改装、そして新たな建物を作っている。7つのリノベーション建築、3つの新たな建築物(最後の一つが2017年末に完成予定)からなる施設は、レクチャーや映画祭、アートの展示など様々な用途に対応する。

過去と未来の統合というのは、プラダというブランド自体のテーマでもある。プラダにおいてファッションと建築は、影響し合い、時に重なりながら、進化しているのだ。

Prada Rong Zhai

NO.186 NORTH SHAAN XI ROAD, JING’AN DISTRICT, SHANGHAI。TEL86 021 2218 0200。〜12月17日。10時〜17時(木、金、土〜21時)。月曜休。

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