Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

ヴィトラ・キャンパスで大イームズ展が開催中です!

$
0
0

October 25, 2017 | Design, Architecture, Travel | casabrutus.com | photo_Adriano A. Biondo text_Yumiko Urae

建築、デザインの聖地ヴィトラ・キャンパスで、大規模なチャールズ&レイ・イームズ展が開催中。代表作のみならず、彼らが手がけた映像や作品づくりのプロセスなどから、マルチクリエイターとしてのイームズ夫妻の鋭い感性を紹介する。

アメリカのミッドセンチュリー・デザインを率いたデザイナー、チャールズ&レイ・イームズ。彼らの家具をヨーロッパで60年間、3世代に渡って手がけてきたヴィトラが、ドイツ、ヴァイル・アム・ラインにある〈ヴィトラ・キャンパス〉内で大規模かつエクスクルーシブな『イームズ・セレブレーション』展を開催中だ。1940年代からフィルムやインスタレーションを手がけ、アートディレクターとしても活躍したデザインの先駆者の仕事を、ヴィトラ・キャンパスにある4つの名作建築内で一挙に公開する。

Power of Design パワー・オブ・デザイン — フランク・ゲイリーの〈ヴィトラ・デザイン・ミュージアム〉

プライウッドのセクション。米軍から依頼されて生産した添え木、飛行機の翼、椅子《イームズプライウッドチェアLCM》、《イームズプライウッドチェアLCW》、子供用家具、1945年の《イームズエレファント》オリジナルなども。

2015年にロンドン〈バービカン・センター〉で行われた企画展『The World of Charles an Ray Eames』をもとに、アートとデザイン、テクノロジーのパイオニアとしてのイームズを紹介する。

世の中のニーズを理解し、そのツールを作ることに徹したチャールズとレイは、コミュニケーション・デザインにおいても才能を発揮した。1964年、ニューヨーク万博のIBMパビリオのマルチスクリーンの再現、1959年、モスクワで発表した「アメリカの光景」では緊迫した冷戦下、自然、動物や社会を映し出す映像を上映し、アメリカとソ連はそれほど違わないと訴えた。
   
中でも必見はグーグル・アースの発案の鍵になったとも言われる教育映画「パワーズ・オブ・テン」。最初に映し出されるのは1m四方のピクニック風景。そこから10秒かけて頭上に上がり、10m四方、100m四方、さらに宇宙の果てまでを映し出すという内容だ。このためにレイがピクニック風景を用意する様など撮影時のドキュメントや、オフィスでも旅先でも撮影を続けた彼らの写真アーカイブも興味深い。

Pray Paradeプレイ・パレード — フランク・ゲーリーの〈ギャラリー〉

《ザ・トイ》(1951)は三角形と正方形のカラフルなペーパー・パネルと木製ポールのキット。翌年には《ザ・リトル・トイ》も発表。家やテント、飛行機などをカラーバリエーションの組み合わせでいろいろなパターンが楽しめる。
ロングラン・ベストセラー《ハウス・オブ・カード》(1952)は54枚入りのカードのオリジナル。

玩具は子供のためだけではないと考えるレイとチャールズは世界中のから玩具を集め、製作もした。レイはニューヨークで美術を専攻後、マーサ・グラハムにダンスを学んだ経験もある。抽象的な美術よりも日常に役立つものを創造する道を選んだ彼女はお芝居や映画が大好きな女性だった。サーカスやパレードにも出かけ、いろいろな国のお面を集め、レイとチャールズは人の集まる会でエキゾチックな民族衣装やお面などをかぶって仮装を楽しんだ。子供にとっても仮装は、自由にのびのびした自己表現の育成に役立つと考えていたようだ。

凧やコマは立体的で、その構造と動きを見ながら、身体を使ってバランスを理解させるのに最適だ。チャールズは美術学校で学生を教える時もまず、凧を作らせ、飛ばす実践を行なった。

会場ではチャールズとレイが初めて一緒に撮影したフィルム『トラベリング・ボーイ』(1950)と『パレード』(1952)も上映されている。

Kazam! カザーム! — ヘルツォーク&ド・ムーロンの〈シャウデポ〉

アルミ、ファイバーグラスなど試作の展示はヴィトラでは今回が初めて。

多くの人へ手の届くようにと、レイとチャールズは、椅子にファイバーグラス、プライウッド、アルミニウム、鋼線といった安価な素材を取り入れた。

同展タイトルの「カザーム!」は彼らがより性能の高いプライウッドの型取りをするために作ったマジック・マシーンのこと。木のフレームに平らなプライウッドを置き、風船を膨らまして有機的なフォルムを作り出す。これを1942年に越したLAのアパートメントで組み立て、実験していた。

Ideas and Information アイデアと情報 – ザハ・ハディドの消防署

「映像はアイデアに出会うための方法」とチャールズ・イームズ(1970)。複雑なアイデアや事実を理解してもらうために、映像は最高のコミュニケーションツールだと信じていた。

1941年から1978年にかけて彼らは、100以上の映像を手がけた。建築、デザイン、科学とテクノロジー、そしてコンピュータとアートやデザインをニュートラルに、感性豊かに、ユニークに捉えたものだ。

ザハの消防車内では開館時間の10時から18時まで、年代順に歴代の映像を流し続けている。《ラウンジ・チェア》(1956)や《ファイバーグラス・チェア》(1970)、《ソーラー何もしないマシーン》(1957)などの自作を捉えたものをはじめ、より快適な生活の向上のためのコンピューターやサイエンス、民族の儀式、ピエロや相撲取りの舞台裏、IBMやポラロイド社のプロダクト紹介、スミソニアン研究所との共同プロジェクト…さまざまな分野に広いアンテナを巡らせていた彼らの目が捉えたものは、今見ても新鮮だ。

祖父母の思い出話をTVインタビューで語るイームズ・デミトリオス。

オープニングにはイームズ・オフィスを主宰する実孫、イームズ・デミトリオスと親族も大勢アメリカからやって来た。

「チャールズは最初のキャリアで失敗すると、鬱病にかかり、8ヶ月間メキシコに旅に出ました。現地で見たのは、貧しくて何も持っていない人たちが感性豊かに、文化を大切にする姿でした。それから、やりたくない仕事はきっぱりと辞めて、祖母レイと一緒に1949年までに家具、本、写真、グラフィック、フィルム、マルチメディアとすべての表現にチャレンジしたのです」とデミトリオスは語る。

1958年に教育プログラムでインドに招待されたにイームズ夫婦は初期サンスクリットの詩『バガヴァッド・ギーター』から自分たちのエトスを見つけ出した。

「仕事とは、行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない」レイとチャールズにとってプロセスはすべて。時代を超え、ツールは変わっても、現代のクリエーターに受け継がれる多くのメッセージがこの展示には潜んでいる。

『An Eames Celebration』

〈Vitra Campus〉
Charles-Eams-Str.2 D-79576 Weil am Rhein
TEL +49 7621 702 3200。10時〜18時、12月24日10時〜14時。無休。〜2018年2月25日。入館料:共通17ユーロ。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

Trending Articles