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日常の窓からアートまで。窓から見える世界。

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September 12, 2017 | Architecture, Art, Design | a wall newspaper | text_Jun Kato editor_Tami Okano

窓をあらゆる側面から徹底的に掘り下げる「窓学」。10年間の成果と新たなアート作品を、一堂に展示。

窓は古今東西、どんな建物にも設けられてきた。そうした窓を学問とし、多角的に探究する「窓学」なるものがあることを、ご存じだろうか。

これは窓メーカーとして知られるYKK APが2007年から取り組んでいる研究活動で、「窓は文明であり、文化である」という思想のもとに、窓に着目して多角的な知見を収集してきたもの。13年に同社は「窓研究所」を設け、研究者や建築家とともにアカデミックな視点から窓を調査・研究を進めてきた。14年にはミラノサローネへアトリエ・ワンと出展。建築家やアーティスト、デザイナーが参加する窓研究所のウェブサイトでも、窓の世界観を広げる情報を発信し続けている。

その窓学10周年を記念し、東京・青山のスパイラルで展覧会が開催される。ディレクターに東北大学教授の五十嵐太郎、会場構成に若手建築家の西澤徹夫を迎え、これまでの幅広い研究成果がわかりやすく紹介されるほか、レアンドロ・エルリッヒ、鎌田友介、ホンマタカシの3名によって本展示のために新たに制作される窓の作品が発表されるというから、期待が高まる。

レアンドロ・エルリッヒ/今回の展覧会のために制作される窓のアート。

建築への造詣も深いエルリッヒは、窓の想像的な役割を探求する「窓のものがたり学」で2008年度に「窓学」に参加した建築家・原広司とのコラボレーションを通じ、今回ファンタスティックな窓のアートを新たに制作。窓が持つ創造力をかき立てるような表現となることが予想される。会期初日には、原とエルリッヒの対談も予定。 レアンドロ・エルリッヒ〈Window and Ladder - Too Late to Ask for Help〉2008 ©Lorenzo Flaschl, Courtesy of Galleria Continua

ホンマタカシ/写真家が感銘を受けたル・コルビュジエの窓。

「窓の写真学」で「窓学」に参加しているホンマタカシが、ル・コルビュジエ作品の窓に焦点を当てて撮り下ろし。展覧会場では、ホンマが特に感銘を受けたラ・トゥーレット修道院の窓辺を実寸大の模型で再現するとともに、窓写真を展示。修道院の窓から見た風景を撮ったカメラ・オブスキュラ作品も含まれる。 ホンマタカシ〈La Tourette Monastery, France〉2017

塚本由晴/フィールドワークを重ねた「窓の仕事学」。

日本各地の手仕事のものづくり工房や商店、祭りから「働く窓」を採集し、もの、まち、自然、人などとの相互関係から起こっていることを検討し、その連関の中に窓の存在を位置づける研究活動。2年間にわたり278の「働く窓」の事例を採集した成果は『WindowScape3 窓の仕事学』として、出版もされている。 ©東京工業大学塚本由晴研究室〈窓の仕事学〉 2014

10月3日にはシンポジウム『窓学国際会議─窓は文明であり、文化である─』も開催される。国内外で活躍する建築家やアーティストをはじめ、これまでに「窓学」に参加した多彩な分野の専門家、そして海外からもユニークなゲストを招聘。講演者20名以上による、国際的かつ学際的な窓の研究発表が一日を通して行われる予定だ。

内と外の境界として、また多種多様な要求や過酷な環境に対応し、結節点となっている窓。展覧会の会場で窓に対する様々な視点に触れることで、私たち一人一人の心の窓も広がりそうだ。

『窓学展─窓から見える世界─』

9月28日〜10月9日。 〈スパイラルガーデン〉
東京都港区南青山5-6-23
TEL 03 3498 1171。11時〜20時。会期中無休。入場無料。

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