September 12, 2017 | Architecture, Travel | a wall newspaper | photo_Shiro Muramatsu text_Chiyo Sagae editor_Yuka Uchida
鬼才建築家マレ・ステヴァンスの集合住宅。パリに行くなら必見のモダン建築です。
建築ファンのパリ巡礼にコルビュジエ財団は外せない。ならば財団から徒歩5分のマレ・ステヴァンス通りも合わせて訪ねよう。ロベール・マレ・ステヴァンスは、1920年代モダニズムの黎明期、ル・コルビュジエと並ぶ気鋭の建築家として活躍した人物。閑静なこの通りには彼の建築が点在しており、中でも必見は代表作〈集合住宅〉。これまでは外観を眺めるしかなかったが、カーサ読者に吉報が! なんと数年前に内部のアトリエがモダニズム家具を扱う〈ギャラリー54〉の所有となり、見学が可能になったのだ。
ル・コルビュジエのライバル!?
ロベール・マレ・ステヴァンス 1886年パリ生まれ。1920年代〜30年代の建築・デザインのモダニズムを牽引。代表作に〈ポール・ポワレ邸〉〈イエールのノアイユ邸〉など。マン・レイ映画の舞台美術でも活躍。1945年没。
そもそもこの〈集合住宅〉は、友人アーティストたちとステヴァンス自身の事務所兼住宅として設計されたもの。外観は箱や円柱を重ねた幾何学的な印象。だが、空間のプロポーション、鏡を使い視覚的にエンドレスに見せる螺旋階段「エスカルゴ」、各住居の作り付け家具の完成度など、緻密なデザインがステヴァンスならではの品位を際立たせる。驚くべきは、彼が若き金属加工製造業者ジャン・プルーヴェを発掘したこと。表門や金属製の窓枠システム「ギロチン」、金属ボールがレール上を滑るカーテンレールなど、今もプルーヴェの初期の仕事が残っている。ステヴァンスとの協業はその後、プルーヴェにコルビュジエやペリアンとの出会いを生んだ。
今回見学できるアトリエ部分は、普段は高級家具を求めて顧客が出入りする空間だが、“カーサを見た”と伝えれば見学のためだけにアポイントしてもOK。次のパリ行きで訪れたいホットアドレスだ。
住居棟の家具も素敵です。
ギャラリーオーナー住居(見学不可)の作り付け家具は全部ステヴァンスの設計。アールデコの趣で、収納容量と出し入れ時の使いやすさも完璧。窓辺はカーテン代わりにプルーヴェの鉄と木材のブラインドシステム「ギロチン」を使用。