August 14, 2017 | Architecture, Art | a wall newspaper | photo_Keisuke Fukamizu editor_Jun Ishida (c)Yoshitomo Nara
1987年から現在に至る代表作が勢ぞろいする展覧会がスタート。展示欲をそそったという豊田市美術館の魅力を語ってくれました。
奈良美智さん、谷口吉生の豊田市美術館はいかがでしたか?
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国内では5年ぶりとなる個展が豊田市美術館でスタートした奈良美智。1987年から2017年までの奈良の代表作が一堂に会す展覧会のタイトルは、『奈良美智 for better or worse』だ。タイトルについて奈良は、結婚式で使われる「良き時も悪しき時も」というフレーズからとったという。
「大学卒業から今までを振り返るような展覧会なので、こうやって展示してみると、誓い合った夫婦のように自分は良き時も悪しき時もやってきたな、まだ別れてないなと。30年ってちょっとかもしれないけれど、制作は常にそばにありました」
1987年という年は、奈良が美術館近くの長久手市にある愛知県立芸術大学大学院を修了した年だ。修了後、ドイツに旅立つまでさらに1年滞在して制作を続けた奈良は、大学からの計7年間をここで過ごしている。そして、2011年に起きた東日本大震災の後も、奈良は夏から翌年春までを大学のアーティストインレデジンスで過ごした。震災後、絵を描けなくなった奈良が再び絵筆をとる力を得たのもこの地である。
奈良にとって第二の故郷といえるこの土地で展覧会を行うことを決めた理由の一つに、豊田市美術館の建物自体の魅力があったという。「以前、別の美術館に勤めていた現館長の村田さんに展覧会をやってほしいと言われ、“豊田市美術館だったら”と答えたことがあります」と振り返る。豊田市美術館は、1995年に開館した建築家・谷口吉生の代表作の一つだ。
「素晴らしい建物で、展示欲をそそられました。歩いていると、大きな建物なのに日本人の身体に合わせた空間作りをしていると感じる」
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展覧会では、1階の入口付近に奈良のインスピレーション源ともいえるレコードジャケットや書物が並べられ、続いて初期作品やドローイングが展示されている。2階に上がると、天井の高い空間に〈graf〉と共同制作した小屋などの立体作品が置かれ、3階には99年から最新作に至る絵画作品が展示されている。絵画は作品によって高さが変えられ、また一つの壁に掛けられる作品数も部屋によって異なっている。
「1階と2階の大きな箱型の空間は、天井も高く現代的な造りなのに対して、3階は画廊のようなちょっと古いタイプのヨーロピアンな造りになっています。同じ人が描いている絵が、階によって配置を変えると全然表情が変わるんです。3階は絵に集中するように壁に1点ずつ展示していますが、1階ではあまり絵の内容に関係なく絵が建物の一つの要素になるように配置しました。そうしたことが気楽にやれたのが谷口建築の素晴らしさだと思います」
奈良が谷口建築とがっぷり四つに組んだ展示をお見逃しなく。
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