June 10, 2017 | Architecture, Travel | a wall newspaper | photo_Yuji Ono text_Mari Matsubara coordination_Naoko Takahashi (WaSabi)
1970年代に度肝を抜いたであろう超高層ホテルは、構造をそのままに最新ホテルとして蘇りました。
オスカー・ニーマイヤーのホテルが22年ぶりに復活です!

リオデジャネイロを代表する賑やかなコパカバーナビーチから西へ約10km。途中イパネマの海岸も通り過ぎた先に、サン・コンラド海岸が見えてくる。比較的静かなビーチの目の前にそびえ立つ高さ110mの円筒形ビルは、あの巨匠建築家オスカー・ニーマイヤーが設計し、1972年に開業したホテルだったが、95年に閉鎖後、ずっと放置されたままだった。それが完全にリノベーションされ、5ツ星ホテルとなって今年1月に再オープンした。設計当時の話や、リノベーションに関して、オスカーの甥にあたる建築家のジョアン・ニーマイヤー氏に話を聞くことができた。
「このあたりは60年代までゴルフ場が1つあっただけで、森と沼に覆われたほぼ手つかずの自然でした。しかしオスカーは54年にすでに、この近くに自邸であり後に別荘となるカノアス邸を建設しています。この緑あふれる斜面を切り開いて低層の建物をつくるよりも、高層の細長い建物を建てたほうが自然破壊への影響が少なく、眺望も得られると判断したのでしょう」


ホテルは70〜80年代は映画祭やジャズ祭の会場となり、セレブリティーも集う文化と経済の中心地として大いに賑わった。閉業後すぐに文化財指定されたので、リノベーションはいかに元の構造を壊さず残すかに注意が払われた。
「オスカーの設計の特異性は、ほかのリオの海岸沿いに建つほとんどのホテルが、客が海に背を向けて入っていくのに対し、海と反対側にエントランスを設け、ロビーに入るなり海の景色が目の前に開けるようにしたことです。オスカーは常々、建築で人々をびっくりさせたいと言っていましたから」
ニーマイヤー得意の曲線を多用したロビーに、たった1本しか柱がないことにも驚かされる。シービューの客室からは息をのむような海原と、朝夕刻々と色を変えるドラマティックな空。山側なら、とっぷりと暮れた丘の斜面に幾千の家々の明かりがともり、星屑のパノラマを見せる。かつてカリオカたちに愛されたホテルがこうして蘇り、伝説をまた紡ぎ始めた。
