December 8, 2024 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回出会ったのは、11月の風物詩・酉の市に並ぶ「熊手」。古くから続く技法で熊手を手作りする工房を訪ねました。
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年末が近づくと気になるのが酉の市。11月の酉の日、主に関東の神社で行われるお祭りです。境内には熊手を売る露店が並び、威勢のいい手締めの音が聞こえてくる。そんな風物詩の主役「熊手」を作り続けているのが、東京・浅草〈鷲神社〉近くにある〈よし田〉です。
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「私どもの熊手は、注連縄を船首に見立てた “宝船熊手”。七福神さんや、神様のお使いの唐子さん、箕や珠などの宝ものを飾ります」
と語るのは4代目の吉田京子さん。竹を割って竹串を作ったり、厚紙を型抜きしたところへ筋書き(線描)や彩色を施して飾りを作ったり。酉の市に並ぶお店はたくさんありますが、昔から続く手描きの技法で熊手を手作りする工房は、〈よし田〉が唯一だとか。
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「ウチでは代々ね、にっこりと、笑っているように描くんですよ」
日本画用の面相筆で七福神の顔を描きながら、そう話す吉田さん。
「お顔も着物も去年と変わりません。先代が描いていた絵と同じように、と気をつけながら作ります。作家じゃなくて職人ですから、飽きることなんてないですね」
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どんなに小さな飾りも1枚ずつ手描き。だから、形は同じでも少しずつ表情が違うところが愛おしいんです。また、竹や注連縄、紙など、燃やせば土に還る自然素材だけを使っているのも特徴。なんと竹串に塗る糊まで手作りです。
「熊手作りと合わせて鳶職も営んでいるので、同業の皆さんからお正月飾りの門松の竹を譲り受け、竹串に再利用しています」
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さて、次に見せてもらったのは、手作りした飾りを土台に組み込む「差し込み」の作業です。飾りに付けてあった竹串を切り出し刀で削り、位置を微調整しながら1本ずつ差していく。見えない部分に縁起のいい鏡餅の飾りが隠されていたりするのも、粋なんです。
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組み上がったら紅白の紐をかけ、金箔を貼って完成! 熊手というと賑やかでエネルギッシュなイメージでしたが、〈よし田〉の熊手からは、柔らかさや統一感が感じられました。いろんな色や飾りが混ざり合いながらも、みんなが同じ方向を見て進んでいるような、優しい一体感があるんです。
「1年にできるのは2000本くらいでしょうか。酉の市が終わった翌日からまた、1年先に向けてコツコツと作り続けます」
果てしない手間と時間をかけて作る宝船熊手が、今年もたくさんの人のもとへ福を届けるんですね。
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宝船熊手 作/よし田
左/1.5寸(H17cm)。右/3寸(H42cm)。サイズは尺3まで。価格の目安は2寸平で6,000円~。関東三大酉の市とされる浅草〈鷲神社〉の境内店舗のみで販売。●よしだ/東京都台東区千束3-20-25 TEL 03 3874 3096(見学不可)。かしゆか
音楽ユニットPerfumeのメンバー。ニューアルバム『ネビュラロマンス 前篇』発売中。全国11都市を巡るツアーも開始。好きな海外の祭りはドイツのクリスマスマーケット。Instagram: @kashiyuka.prfm_p000003