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建築家たちの試行錯誤を疑似体験できる本が発売!

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December 6, 2024 | Architecture, Culture | a wall newspaper

建築を設計するとは、どういうことなのか? 課題と目的を見出しながら進む過程を辿る読書体験。

山﨑健太郎〈52間の縁側〉の模型写真。木造の長大な構造体の中に居場所を入れ込むことを検討。
木村吉成+松本尚子〈house H/studio H〉ではL字形の架構をまず定め、必要なプランを当てはめていく。
二俣公一〈Whale Brewing 呼子クラフトビール醸造所〉の模型。空間を忠実に再現。

唯一無二の建築やインテリア空間は、どのようにして生まれるのか。工事現場でつくることに比べて見えにくい「設計する」という行為を、実際のプロジェクトを通じて明らかにするのが本書である。

建物の設計というと、どんなイメージがあるだろう。敷地訪問やクライアントとの会話から発想し、スケッチを描くこと。間取りを検討し、模型やCG、図面を作成すること。これらはどれも、設計という行為に含まれる工程や手段の、ほんの一部でしかない。設計には「こうやれば答えが出せる」というセオリーはないし、そもそも確たる正解もない。道なき道を行く旅路のようなものといえる。

古谷俊一〈スイシャハウス〉のスケッチ。植栽を建築と同列で考えるプロセス。

本書に登場するのは、現在活躍する7組の建築家。個人住宅や集合住宅、店舗、デイサービス施設など、それぞれのプロジェクトに向き合い検討するプロセスが、数多くの模型やスケッチ、図面、写真、表などで示される。面白いのは、割り当てられたページ数はほぼ同じでありながら、建築家によって誌面を構成する要素やレイアウトが不揃いであること。建築家の個性とプロジェクトの特性が、にじみ出ている。

読み進めると、設計という旅路が一直線でないことを疑似体験できる。寄り道をしたり、トラブルがあったり、発見をしながら次に進む手段を考えたり。ようやく完成に行き着く建築の姿は、果たしてどのようなものか。設計の奥深さと楽しさに、本書を通じてぜひ触れていただきたい。

中山英之〈弦と弧〉の模型。いくつかの案を重ね合わせる思考のうちに、突然に生まれたという実施案。
五十嵐 淳〈House in Hokkaido〉実施決定時のスケッチ。この後も完成までにはスタディが延々と続く。
島田 陽〈白川の住居〉の構成を示すダイアグラム。長方形と三角形の床をスキップフロア状に組み合わせる。

『設計プロセスの現場』

建築家の創造プロセスのリアルに迫る本。ひとつの仕事としては不釣り合いなほどの熱量をもってつくり出される設計のリアルを、7組の建築家が自ら解き明かす。グラフィック社刊。3,630円。

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