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幅允孝さん、『ONE PIECE』はアートですか?

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November 13, 2024 | Art, Culture | a wall newspaper

『「ONE PIECE ONLY」展』を企画した岡本正史と『ONE PIECE』をこよなく愛する幅允孝が語り合う。

会場の入口から出口まで、曲線を描く140mの壁。
1,000話の原画。1997年から続く長期連載の作画は、すべてフルアナログ! 力強い線に圧倒される。(c) Eiichiro Oda / Shueisha Inc. All rights reserved.
「インペルダウン編」の大好きなシーン!

誰もが知るマンガを主題に、「誰も見たことがない」光景に出会える展覧会が開催中だ。コミックス発行部数が5億1000万部を超え、単一作家によるコミックシリーズとして、世界最多発行作品のギネス記録を持つ『ONE PIECE』。広く、長く、深く愛される作品がどう作られるのかを体感させる『「ONE PIECE ONLY」展』を、ブックディレクター幅允孝が訪ねた。

「コミックスの全ページをこんな形で見れるとは!」と、140m続く壁面にまず圧倒される。

「これね、コミックスのページを一枚ずつ手で貼ってるんですよ」と話すのは、〈PLAY! MUSEUM〉と協働してこの展覧会の構成とキュレーションを手がける岡本正史。

「連載1000話×コミックス100巻を記念して、『ONE PIECE』がどうやって作られているのかをきちんと記録しようと、プロジェクトが始動しました」(岡本)

アーカイバル・インクジェットプリントによる「Real Color Collection」の一枚。
退色しやすい原画を完成時の美しさそのままに印刷。
オフセット印刷機を模した展示。
オフセット印刷に使われるブランケットも間近に鑑賞できる。

尾田栄一郎がコマを割り、構図やセリフも配した鉛筆描きのネームと、黒々と力強いペン入れが施された原画は、第1000話の17枚をセットで展示。執筆から製版、印刷、造本までのプロセスを、樹脂版や校正紙などで魅せる。

「ジャンプ本誌は、今も活版輪転印刷で刷られていますが、製版フィルムと樹脂版はデータから直接刷版を作るCTPに、文字も写植からデジタルに置き換わっています。1970年代頃まで主流だった亜鉛版や金属活字の技術も見てもらおうと、改めて版を作って展示しています」(岡本)

「かつての技術にも光を当て、マンガ印刷の歴史を見せてくれるんですね。宝箱のような什器に収められているのが素敵です」(幅)

近年まで使われていた黄色い樹脂版。
尾田栄一郎の仕事机の写真。まさに絶景。
宝箱を模した特製の什器。

会場には「集英社マンガアートヘリテージ」のアートプリントも。

「モノクロームの物語表現を最も美しく、強く見せるには? と考えて、1969年のハイデルベルグ社製の印刷機など2台の活版平台印刷機で刷ったものと、コロタイプ印刷、インクジェットプリントのシリーズもあります」(岡本)

「目に飛び込んでくるような物としての強さを感じます。文化財レベルの技術も間近に見れて、印刷物を愛する人も、アートファンも、物語のファンも存分に深掘りができる。マンガを紙で読む意義やありがたみを体感しました」(幅)

『「ONE PIECE ONLY」展』

~2025年1月13日。〈PLAY! MUSEUM〉東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟。無休。観覧料2,400円。チケット購入者特典の公式図録は非売品。ゴールドに艶めく特装版も販売。装丁はともに大島依提亜が手がけた。

幅允孝

はばよしたか 本に関するあらゆるキュレーションを手がける〈BACH〉代表。公共図書館や書店、展覧会など人と本が出会う場を作り、本というメディアの魅力を広めている。

岡本正史

おかもとまさし 東京藝術大学美術学部卒業、集英社勤務。「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」のほか「Manga Factory」「Comics Digital Archives」などを立ち上げる。


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