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瀬戸内国際芸術祭2016〈小豆島〉新作レポート!

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April 13, 2016 | Art, Architecture, Design, Travel | casabrutus.com | photo_Kunihiro Fukumori text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano

第3回目となる瀬戸内国際芸術祭2016が、今回も3月にスタート。数ある島の中でも注目したのは、小豆島。高松のうどんとは一味違う、そうめんやオリーブと一緒に楽しめる新作を中心にご紹介します!

目《迷路のまち〜変貌自在の路地空間〜》
瀬戸内海の島々の中でも、比較的大きい小豆島は、海と山の両方が楽しめるお得な島だ。まずは土庄(とのしょう)港近くの小さな路地がくねくねと続くエリアに出かけよう。昨年の越後妻有トリエンナーレ『大地の芸術祭』でも驚きのコインランドリーを出現させたアート・ユニット「目」が、またもや異次元につながるエアポケットのような場所を作り出した。
目《迷路のまち〜変貌自在の路地空間〜》
彼らの新作は、外から見るとありふれた木造の日本家屋。が、玄関から中に足を踏み入れたとたん、白い立体迷路が広がる。降り積もった雪の中を熊がさまよって穴を開けたような細長い通路が、口を開けているのだ。かなり急な斜面を上っていくと、元の家の窓やバスタブが顔を出す。部屋一つがまるごと残されたと思しきスペースも。床、壁、天井、階段といった元々の空間構成が完全に変容していて、枝分かれした通路をさまよっていると、自分が1階にいるのか2階にいるのかわからなくなる。
目《迷路のまち〜変貌自在の路地空間〜》
《迷路のまち〜変貌自在の路地空間〜》と題されたこの作品があるエリアは、実際の街も路地が曲がりくねっていて、街そのものが迷路のよう。家の中にも外にも魔宮が広がる。この作品から少し離れたところにあるタバコ屋だった建物も、2013年の瀬戸内国際芸術祭で「目」が迷宮的なアートに変容させている。チケットは共通なので、ぜひ両方で楽しく迷ってほしい。
大岩オスカール《大岩島2》
迷路のような土庄本町のエリアで、もう一つ見逃せないのが大岩オスカール《大岩島2》だ。旧醤油倉庫のそっけない建物の中に入ると、小さな通路の向こうにドアが見える。ただしドアも市松模様の床も黒マジックの手描きだ。布のドアを開けると、直径・約12mのドーム状の大空間! その内側に彼が瀬戸内の風景から着想した浜辺に打ち寄せる波、木が生い茂る山、雲か風が渦巻くような空がマジックで手描きされている。居心地のよさそうな小さな家や、海をのんびりと進む船も。足の下も頭の上も、すべて彼の手による細かい描きこみで覆われてしまう。
大岩オスカール《大岩島2》
作者の大岩は、描くのがとても早くて、このような広い面積もあっという間に埋め尽くしてしまう。大岩はこれまでにも観客を包み込むようなインスタレーションを発表している。この作品も、2013年の瀬戸内国際芸術祭の際に伊吹島で発表した作品を発展させたものだ。床の一隅に「2013」「2016」と入ったサインもあるから探してみよう。
清水久和《愛のボラード》
《愛のボラード》というオヤジギャグ全開?の作品を発表したのは、2013年の瀬戸内国際芸術祭で同じく小豆島の《オリーブのリーゼント》で話題をさらった清水久和。“ボラード”とは船を繋留する縄をひっかけるもの。実際のボラードは10分の1程度の大きさだが、この《愛のボラード》は小豆島の東南、田浦半島という小さな半島のほぼ突端にあり、あまりにも大きいので対岸からもよく見える。この巨大ボラードでいったい何を繋留しようというのか。大き過ぎるものは本来の機能を失って、意味の海へと漂流してしまう。
清水の前作《オリーブのリーゼント》には無人販売の屋台という機能がついていた。が、本体のくぼみにある陳列棚があまりに小さくて、みかんなら5、6個も置けばいっぱいになってしまう。《愛のボラード》も《オリーブのリーゼント》も、もはや、どないすんねんこれ、と突っ込まれるという機能しかない。その役立たずぶりが愛される所以なのだ。
京都造形芸術大学城戸崎和佐ゼミ+graf《竹の茶室》photo_Kenryou GU
インドのアーティスト、ソサ・ジョセフの展示会場になっている旧醤油会館。その裏庭、内海八幡神社の間の竹林に出現したのは京都造形芸術大学の城戸崎和佐ゼミとgrafが作った《竹の茶室》だ。彼らは地元の住民や団体と協力して、竹林の整備をしている。
京都造形芸術大学城戸崎和佐ゼミ+graf《竹の茶室》photo_Kenryou GU
春会期に合わせて完成した茶室の外観は竹をイメージした淡いグリーン。躙口(にじりぐち)から中に入ると、床の間のかわりにアクリルで作った大きな窓が。そこから見える木々の借景が床の間の掛軸の代わりだ。季節によって移り変わる緑の表情をたっぷりと楽しめる。薄暗い中、一輪挿しに挿した花で季節を味わう従来の茶室とはまったく違うやり方だけれど、こういう季節の取り入れ方もいいものだ。
草壁港にあるジェラートショップ《Shodoshima Gelato Recipes Project by カタチラボ》(ミノリジェラート)。ジェラート3種盛り500円。
瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクター、北川フラムは近年、食にも力を入れている。地元の食材の、旬の一番おいしいところをアートと一緒に楽しんでもらおうというのだ。小豆島では、地元で人気のイタリアンレストラン〈FURYU〉がプロデュースしたジェラートショップ《Shodoshima Gelato Recipes Project by カタチラボ》(ミノリジェラート)に早くも行列ができている。

ミルクやコーヒーといったおなじみのフレーバーだけでなくデコポン、レモンなど瀬戸内らしい季節の果実類も。小豆島名産のオリーブもある。どれもしっかりとした風味とコクがある絶品の味。建物は、使われなくなっていたお米の倉庫をgrafがリノベーションしたもの。草壁港のすぐ近くだが、並んでいるうちに船に乗り遅れた、などということのないようにご注意。
《Shodoshima Gelato Recipes Project by カタチラボ》は、grafがリノベーションした建物を使用している。
ワン・ウェンチー(王文志)《オリーブの夢》 photo_Naoko Aono
瀬戸内国際芸術祭が始まって6年、変わったアートにもすっかり慣れた島の人たちのお薦めは“中山”だ。島の人と話すと必ずと言っていいほど、「中山行った?」と聞かれる。これはワン・ウェンチー(王文志)の作品《オリーブの夢》のこと。中山地区にあるので地元の人は「中山」と呼んでいる。ワンはこの作品を2010年の第一回瀬戸内国際芸術祭から作っているのだが、毎回、デザインを変えて作り替えているのだ。今年の作品も5,000本の竹を編んだ力作。寝転ぶと竹の感触が気持ちいい、棚田の中の、いい休憩所になる。
トイレは島内のあちこちにあるけれど、建築好きなら2013年にタト・アーキテクツの島田陽が設計した《おおきな曲面のある小屋》がお薦めだ。文字通り、大きな白い曲面がくるっと回ってアプローチと個室になる。さらに、今年の夏会期には中山英之が地元の素材を使って《石の島の石》という公共トイレを作ってくれる。ロマンチックなタイトルに、期待が膨らむ。

瀬戸内国際芸術祭 2016

直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、沙弥島(春)、本島(秋)、高見島(秋)、粟島(秋)、伊吹島(秋)、高松港・宇野港周辺。TEL 087 813 2244。春/〜4月17日 夏/7月18日〜9月4日。秋/10月8日〜11月6日。開館時間は施設・季節により異なる。3シーズン共通パスポート5,000円。公式サイト

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