April 19, 2024 | Design | casabrutus.com
千葉県誕生150周年を記念して市原市など、千葉県内房総の5市で開かれている『内房総アートフェス 百年後芸術祭』。この「百年後芸術祭」に関連して千葉県の他の市でも複数の芸術祭が開催されている。そのうちの一つ、『山武市百年後芸術祭』は保良雄のディレクションによるもの。千葉県北東部、九十九里浜に面した山武市で行われる。
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総合プロデュースを小林武史、山武市在住のアーティスト・保良雄がディレクションを務める『山武市百年後芸術祭』。保良は『内房総アートフェス 百年後芸術祭』で今は人が住んでいない団地の室内に草を植えたインスタレーション《種まく人》を発表して話題になったアーティストだ。これまでも〈森美術館〉や〈銀座メゾンエルメス フォーラム〉でのグループ展で作品を展示している。
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保良が選出したアーティストは17組。ストリートカルチャーからインスピレーションを得た作品を展開するSIDE CORE、その場所で見つけた素材からもう一つの世界を想起させるインスタレーションを制作する梅田哲也、人間のような、あるいは未知の生物のような彫像で知られる加藤泉らだ。
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植物染織の衣服やアートピースをつくっている橘田優子は九十九里浜に琉球藍で染めた旗による100メートルものインスタレーションを出現させる。このほかにも梅田哲也によるパフォーマンスや大塚諒平による「100年後あける梅干しを漬ける」と題されたワークショップなどが行われる。
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4つに分けられたエリアは「100年後」だけでなく「100年前」も想起させる場だ。柴原エリアでは氷河期の終焉によって上昇した海水が砂層を浸食し、岩塊が露出する。九十九里浜エリアは6000年という途方もない時間をかけて形成された九十九里平野の最先端となる海岸だ。国の天然記念物である成東・東金食虫植物群落を擁する〈山武市歴史民俗資料館〉エリアにもアートが登場する。会期中はこれらのエリアを巡回バスが運行する予定だ。初日の4月27日には、芸術祭の総合プロデューサーを務める小林武史や、「反近代」を旗印にする切腹ピストルズらのパフォーマンスも予定されている。
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会場となる山武市は、太古の昔は海底だった。100年、1000年と長い年月をかけて海水が地層を侵食したり、陸地からの砂が堆積したりして、現在のような地形ができあがっている。場所によっては堆積物によって、今も海岸線が海に向かって年に数センチも前進しているところもある。地形の変化や人間の営みによって生態系も移り変わってきた。長い時間とともに起きるさまざまな変化の中で100年後のために何ができるのか、何をすべきなのかを考える芸術祭だ。