April 19, 2024 | Architecture | a wall newspaper
コミュニティのあり方と建築の関係性に着目している山本理顕。プリツカー賞受賞について思うことを聞きました。
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“建築界のノーベル賞” とも言われ、毎年その行方が大きな注目を集めるプリツカー賞。今年の受賞者は山本理顕、日本人では9人目の快挙だ。
審査委員長のアレハンドロ・アラベナは、山本の建築について「パブリックとプライベートの境界線を慎重に揺るがし、人々が集まって交流する機会を増やす」と評する。山本は以前から「地域社会圏」というコンセプトを標榜してきた。人々が住宅や施設の中に閉じこもるのではなく、さまざまな関係性を作り出せるような建築だ。そこでは建築と外側との関係を設計することが重要になるという。たとえばスイスのチューリヒ国際空港の複合施設〈ザ・サークル〉では「路地のある小さな町のようなものをつくりたい」というのが目標のひとつだった。
「町の中心部から電車で15分ほどのところなので、空港の利用者だけでなく、町の人にも活用してもらいたい。そのために24時間誰でも入れるような作りにしました。簡単な屋根をかけただけなので雨や風も入ってきます」
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中国・北京の〈建外SOHO〉は低層部に商業施設が入った集合住宅。当時、中国では防犯のため建物を塀で囲んだゲーテッド・コミュニティにすることが流行していたが、山本はそれをやめて誰もが商業施設に入ってこられるようにした。「巨大な建物を公園のようにしたプロジェクトです」と山本は振り返る。
〈広島市西消防署〉にはガラス張りの見学テラスがあり、消防隊の訓練の様子を見学できる。併せて火災防止などの啓蒙活動も行っており、それがコミュニティの形成による防災につながる。
「ふだんから挨拶や世間話をする仲なら非常時にも『あの家のおばあさんはいつも2階に寝ている』というように救助もうまくいく」
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このような形で山本は「地域社会圏」が有効に機能するような建築をつくってきた、そのことが評価されて今回の受賞となっている。その一方で彼は「個人住宅でも集合住宅でも飲食や教育、サービス業などで利潤を上げるのに制限がつくことが多い」という日本の法律や慣習の問題点を指摘する。自宅や近隣で個人でできる範囲での商いができるようになればそれによって人々が交流し、互いに助け合うことも容易になるだろう。少子高齢化が進む今、他者とゆるやかにつながることができる建築が求められている。
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