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【本と名言365】チャールズ・シュルツ|「(最大の業績とは)限られた才能を…」

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March 12, 2024 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。スヌーピーやチャーリー・ブラウン等、個性豊かなピーナッツギャングたちを生み出した世界の漫画家チャールズ・シュルツ。大人気の裏側で常に劣等感に苛まれ、アイデンティティについて悩み続けたシュルツの言葉。

チャールズ・シュルツ/漫画家

(最大の業績とは)限られた才能を最大限に活用したことです

人間の言葉を理解する奇妙な犬スヌーピーと、いつも考え事ばかりしているチャーリー・ブラウン。毛布が手放せない天才少年ライナス、意地悪でガミガミ屋のルーシー……。舞台は常に子どもたちの日常、その中で繰り広げられるたわいもない会話を見事に切り取った新聞漫画「ピーナッツ」。チャールズ・シュルツは、たった一人で1950年10月2日から1999年12月まで17,897日分の新聞漫画を描き続けた。

当時のアメリカでは、子供はみな幸せで子供時代は素晴らしいものだという前提があった。人生に苦悩し、悩み事があるのは大人だけだと思われていた。しかし、シュルツの漫画に登場する子供たちは、怒り、憤り、敗北感を味わい、叫び、不満をまき散らす。しかし、すぐに立ち直り、感情はクルクルと変化する。シンプルな線と、要素を極力まで減らした空白の多いコマ、同じく簡素化された言葉で、ちっぽけな人間の孤独、人間らしさについて描いた。

「漫画で精神を書くことができると私は心から信じています。」「子供はみなエゴイストで、残酷なものでしょう? 私はいちばん残酷な漫画を描いているのかもしれません。」

連載から徐々に人気が集まり、50年代の終わりになるとピーナッツのキャラクターたちは広告などに起用されるようになり、グッズ等も販売され、大人気キャラクターとなる。広告やテレビアニメ、新聞、漫画等、ピーナッツギャングたちの活躍は留まることを知らない。そんな世界的人気を博していても、シュルツはチャーリー・ブラウンと同様に「僕は誰からも愛されていない」と思い続け、自分の才能には限りがあり、大した人間にはなれないと言い続けた。

あなたの最大の業績はなにか、と訊かれてシュルツが挙げたものは、子供たちでも芸術作品でも、富や名声や権力でもなかった。最大の業績とは、「限られた才能を最大限に活用したことです」と述べている。

この言葉は、世界的にも確固たる地位を築いていた1989年、シュルツ67歳のときに述べられている。その後、1999年(77歳)の12月、大腸ガンの治療に専念するため、シュルツは引退を表明。すると、アトリエには世界中の何百万人にもおよぶファンからの郵便物が殺到した。それまでどんなに称賛されても真に受けなかった彼は、死の間際に立ち、やっとファンの人たちの愛情に気づいたのだという。そして、翌年2000年の2月12日に還らぬ人となった。

世界中で愛される漫画を終生描き続け、桁違いの成功を収める一方で、常に劣等感に苛まれていた天才漫画家の姿を膨大な資料と関係者への取材で説き明かす、決定的評伝。『スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝』デイヴィッド・マイケリス著、古屋 美登里訳、亜紀書房6,600円/2019年

チャールズ・シュルツ

世界中で愛される漫画『ピーナッツ』の作者。1922年アメリカ・ミネソタ州生れ。通信教育で絵を学び、1950年より『ピーナッツ』の新聞連載を開始。以来、50年にわたり『ピーナッツ』を描きつづけ、史上もっとも多くの読者を持つ新聞漫画となる。2000年2月12日、最後の日曜版コミックが配信される前日、カリフォルニア州サンタローザの自宅にて永眠。享年77歳。

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