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【本と名言365】坂本龍一|「…は音楽を聴く楽しみに似ている。」

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March 1, 2024 | Design

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。“教授”の愛称で親しまれた音楽家、坂本龍一。愛書家の彼が気づいた、本と音楽の共通点について。

坂本龍一/音楽家

良い文章を読む楽しみは音楽を聴く楽しみに似ている。

クラシック音楽や民族音楽を学んでいた大学在学中にコンピューターミュージックと出合い、テクノポップで世界を席巻。その後、多くの映画音楽を手がけるなどして、国際的にも名を知られる坂本龍一。テクノポップから壮大なオーケストラ曲、繊細なピアノソロまで、ジャンルや国境を行き来しながら、多くの名曲を発表した。

坂本の多彩な音楽はどのようにして生まれたのか? その一片に触れられるのが、彼の愛読書を紹介する『坂本図書』だ。そこにはロベール・ブレッソン、アーネスト・フェノロサ、ジャック・デリダ、武満徹、小津安二郎などバラエティー豊かなラインナップが並ぶ。だが、それと同時に意外な言葉が綴られる。

「残念なことに僕はこれまで、楽しむために本に接したという記憶があまりない。(中略)普段読むのは思想、哲学、歴史、社会学、民族学、民俗学、人類学など、知識を得、見識を深めるための本」だったという。

創作のため、多様な世界とつながるために本を読む。それが坂本の読書スタイルだった。そんな中、石川淳の『西遊日録』は純粋に楽しむために読んだ“異例の本”だ。

この本の魅力を語る坂本は『西遊日録』を読むきっかけとなった吉田健一の言葉を借りて、こう表現する。「良い文章を読む楽しみは音楽を聴く楽しみに似ている」

新しい情報を得るため、考えを深めるためではなく、ただ楽しいから読む。良い本というのは、何度聴いても飽きることのない良い音楽と似ている。

「音楽を聴いても知識は得られないが、そこから湧き起こる感情や聴覚への刺激は長く体に残る。(中略)本も音楽のように楽しむことができるはず」

そして、多くの人がうなずけるこんな言葉も残している。「良い文章を読むということは、美味いものを食べることとも近いように思う」

無類の本好きだった坂本龍一が愛した本の数々を掲載。『坂本図書』選書・語り 坂本龍一 文・構成 伊藤総研 撮影・Neo Sora バリューブックス・パブリッシング 2,200円

さかもと・りゅういち 

1952年東京生まれ。1978年アルバム「千のナイフ」でデビュー。同年「イエロー・マジック・オーケストラ」を結成し、世界中で活躍。映画音楽も多数手がけるほか、晩年は社会運動にも積極的に参加。2023年没。

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