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岐阜市とS660、イケてるジャパーン!

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March 29, 2016 | Vehicle, Architecture | Driven By Design 最新デザインに乗って建築巡礼。 | text_Hiroki Iijima photo_Tatsuya Mine

またもや地方都市の図書館に胸躍らされ、焼け焦げそうなほどの憧憬を抱く旅になってしまった! 公共施設の中では最も身近な存在であろう図書館は時々刻々と進化しているのでありました。

2階右手には〈ひだまりテラス〉があり閲覧席が用意されている。建物の裏手には名勝、金華山を望むテラスもある。
広大なフロアを持つ2階建て、その2階部分すべてが図書館である。床面積は約7400㎡、つまり2500坪近い。屋根と一体化した木組みの天井は心地よくうねり、「グローブ」と呼ばれる布製の大きな笠——まさに電灯やランプの笠の巨大版——があちこちで宙に浮いている。各グローブの上部は開閉式の換気トップライトになっているため、光も空気もこの笠の下こそが最も読書に好適な場所となる。こうして丸い拠点を広いフロアに分散し、書棚もそれに従って緩く配置されているため、読書の合間についぶらぶらと散策したくなるだろう。読みつつふと考え事をし、頭を整理するために席を立って歩き出す。通りがかりに気になった本を見つけてさらに脳内が活気づく……。ここは市井の思想家育成の場なのである。
グローブの模様は反射、透過率などを調整するための布によるもの。
これがデンマークやフィンランドの話なら「いかにもありそう」で終わりだろうが、いやいや岐阜市・ジャパーンだよ、というのが何とも嬉しい。今回のホンダS660でもまた日本のクルマづくりの成熟度を体感することができた。
正面からサーカスのテント様にせり出しているところにスタバのカフェが入る。
〈ひだまりテラス〉はこんな雰囲気。
シンプルながらも割に音のいいオーディオや、オープン対策によく効くエアコンを装備。
S660は言うまでもなくビートのちょうど四半世紀後のモデルである。軽自動車というカジュアルさをフルに生かしながら、ミッドシップ、オープン、そして当時F1で名を馳せていたホンダ・エンジンの技術がそろい踏みしたのがビートだ。乗れば誰もが楽しくなる、というのは、クルマにとっての大難題だが、それを実現した稀少な一台だった。

ではS660はと言えば、驚くほどキチンとした仕上がりだ。高速では音がうるさくなるので専ら下道をおすすめするが、走行中に次々と「適正」という言葉が浮かんでくる。ハンドル、シフトレバー、各操作系へのリーチを含めたドライビングポジションの適正さ、アクセルペダルとエンジンの反応の、クラッチペダルの踏力とミートポイントの、といったようにすべてが見事に適正なのである。適正な操作を促すことはファントゥドライブの必要十分条件だ。S660はラテン味でもドイツ味でもない、これはこれで日本の大人の味わい。ホンダにも我々にもこの25年間は長いが実りのある歳月だった。

巡礼車:ホンダ S660 β

エンジンは明らかにフツーの軽自動車のものとは違う。アクセルを踏んでパッと放すとシュパーンとターボのウェイストゲートが作動する音がするくらいだ。MTなら7,700回転まで回せるのが気持ちよい。布のトップは両側からぐるぐると巻き上げてトランクへ収納。1,980,000円(Hondaお客様相談センター TEL 0120 112010)。

巡礼地:みんなの森 ぎふメディアコスモス

設計/伊東豊雄建築設計事務所。2015年7月開館。グローブによる光や温熱環境の省エネ化、長良川の伏流水を使った床面輻射の冷暖房などにより消費エネルギーは1990年の同規模建物の半分という。木製格子屋根はヒノキ材を職人の手作業で3方向に編み上げたもの。
岐阜県岐阜市司町40-5
TEL 058 265 4101。

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