February 12, 2024 | Food, Travel | casabrutus.com
豚肉のおいしさをそのままいただく焼肉&しゃぶしゃぶ、お祝いに欠かせない中味汁、てびち(豚足)の唐揚げと、古くから愛され、歴史ある沖縄の豚食文化。那覇でお酒やお茶、道具など「飲む」にまつわる専門店〈LIQUID THE STORE〉を手がける村上純司さんに、そのバリエーションを楽しむ3軒を教えてもらいました。
1.〈島豚七輪焼 満味〉|やんばる島豚を味わい尽くす豚食の名店。
純血在来種アグーと黒豚を配合した「やんばる島豚」の専門店。「足跡以外はすべて食べられる」というように、豚を丸ごと味わう沖縄の豚食文化を象徴するのが《肉全盛り》だ。七輪焼きで17種の部位を1枚ずつ楽しめるというもの。沖縄本島北部の名護市で、信頼できる牧場とさらに屠殺場が車で15分の場所にあるからこそ、他では食べられない、生の豚ホルモンも提供できるという。
「特にホルモンは手間がかかりますが、長年培った技術とスピードで新鮮なうちに処理します。やんばる島豚は肉質もよく、上質の脂が豊富です。ほんのり甘みがあり、栄養価も高い」とオーナーの満名匠吾さん。
名護で生まれ育った満名さんは、島外で偶然知ったやんばる島豚の美味しさに感動し、沖縄に戻り、専門店をオープンさせて20年になる。店では焼肉としゃぶしゃぶを中心に、昔ながらの食べ方や世界の豚肉料理にインスピレーションを得た料理を提供する。野菜や調味料も新鮮なやんばる産が中心だ。専門的でもありながら、誰もが楽しめるメニュー構成で、ファミリーでも楽しめるカジュアルさも併せ持つ。
最近、満名さんは別の場所で、伝統的なかまどを用いた琉球料理や菓子作りのワークショップを開催している。
「失われていく沖縄の食文化や言葉を憂いていた時に、伝統的なかまどのある住宅に出会いました。かまどに培われてきた伝統的な食文化を研究し、発信していければと考えています」
豚食から、沖縄の料理の奥深さや文化に想いを馳せる。そういう意味でも欠かせない名店なのだ。
2.〈富久屋〉|お祝いに欠かせない汁物を定食で。
琉球王朝時代の古都、首里で40年以上、伝統の味を伝える人気の琉球料理店。沖縄には汁物にも独特の文化があり、碗も大きめで具沢山なのが特徴だ。ここ〈富久屋〉は、お正月やお祝いごとの際に欠かせない汁物を、気軽に楽しめる定食形式で提供している。その中でもホルモン好きがたまらないのが中味汁だ。
「中味は下処理に時間をかけています。保温鍋で4〜5時間かけて、うんと柔らかく仕上げます」というのは店主の富名腰米子さん。
汁は他に、「んむわかしー」(さつまいもと豚の三枚肉、キャベツの味噌汁)や、限定数の「むじぬ汁」(田芋とその茎を使った味噌汁)、さらに「ゆし豆腐」や「沖縄そば」も。どれも豚出汁のうま味が存分に感じられるがあくまで上品だ。首里育ちの富名腰さんが、子供の頃から食べてきた首里の味という。
夜は刺身やラフテーなどを加えたコース料理3,000円(4人以上、予約制)もあり、泡盛とゆっくり楽しむのもいい。
3.〈栄料理店〉|名物「てびち」を唐揚げスタイルで。
地元の食材を活かした沖縄の料理と器までも楽しめる〈栄料理店〉の看板メニューが《てびち唐揚げ》。「てびち」とは豚足煮込みのことで、沖縄を代表する豚肉料理のひとつ。琉球王朝時代に中国から伝わったとされる伝統料理だ。ここでは18時間かけて煮込んだ豚足を、唐揚げにして、黒酢南蛮たれで絡める。
中はとろとろ、外はカリッで、豚肉の旨みを堪能できる。また沖縄産の豚足を1本丸ごと煮込んで唐揚げにした《島豚骨付きスネ肉の丸ごと1本揚げ 南蛮黒酢たれ》(2,200〜3,500円、1日限定4本、3〜6名用)というスペシャルな1皿も。
てびち以外に《ジーマーミ豆腐揚げ出し》や、地元野菜や海鮮を使用した創作料理、あぐーのしゃぶしゃぶなど、幅広いメニューが人気だ。また恩納村の道の駅〈おんなの駅〉には、てびち唐揚げ専門店〈豚三郎〉として出店。ドライブ途中の軽食などに、テイクアウトで楽しめる。