February 9, 2024 | Art, Architecture, Design, Travel | casabrutus.com
3回目を迎えた「札幌国際芸術祭」は初めての冬の開催。輝く雪とアートが並ぶ、見どころ満載の芸術祭です。
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2014年、2017年と開かれてきた札幌国際芸術祭(SIAF)。パンデミックのため、リアルでは6年半ぶりの開催となった今回は、夏季開催だった前の2回とは変わって冬に開催されている。雪まつりともあわせて楽しめる芸術祭だ。
テーマの「LAST SHOW」サブテーマの「はじまりの雪」は「LAST」と「はじまり」という矛盾した言葉を含む。
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「空からの手紙とも言われる雪は、人によっては最後の雪になるかもしれないし、何かを始めるきっかけにもなる」とSIAF2024ディレクターの小川秀明はいう。
主な会場は〈北海道立近代美術館〉〈札幌芸術の森美術館〉〈札幌文化芸術交流センター SCARTS〉〈モエレ沼公園〉〈さっぽろ雪まつり大通2丁目会場〉など6カ所。そのうちのひとつ、〈未来劇場(東1丁目劇場施設)〉は普段は劇場として使用されている施設だ。舞台裏や客席にアートが設置されて鑑賞者を出迎える。
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冒頭で登場するのは韓国のアーティスト、チェ・ウラムの3つの作品だ。息を潜めるように、それぞれ違う動きをしている。虫に寄生する植物のような作品、のぞき込むと無限に続いているように見える穴。彼は日本のアニメーションからも影響を受けたという。こんなSF的な作品から「未来の劇場」は始まる。
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暗がりの中で動いているのは後藤映則の作品だ。よく見ると人物がてくてくと歩いている。これはメッシュ状の立体物を回転させ、光をあてることで浮かび上がるもの。実際には存在しないシルエットが光のトリックによって出現する。
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2022年に惜しくも没したアーティスト、青木美歌は透明でありながら周囲の景色を映し出すガラスを「見えるものと見えないもののあいだ」を探究する自身の制作にふさわしい素材だと考えた。彼女の作品は私たちの目には見えない極小の生命体を思わせる。私たちが実際には多様なものと共生していることを思い出させてくれる。
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白い光に満たされた空間に足を踏み入れると、唇など人間の器官をモチーフにした作品が待ち受ける。このシン・リウの作品は人類の本能である「種の保存」をテーマにしたもの。この本能は人類に限らずどの生物にも備わっているものだが、人類はさらに科学や医学の力を借りて、他の生物にはない手段による生命の再生産を行うようになった。クールなインスタレーションはそんな状況に言及している。
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天井の高い空間に吊された大きな布は、イタリアのアルプス山脈の氷河が溶けるのを防ぐため、初夏に雪を覆っていたものだ。が、ターポリンというプラスチック素材でできた布は2年おきに交換しなくてはならない。ではそのプラスチックはどうしたらいいのだろう? 建築家のユニット、ジョヴァンニ・ベッティ+カタリーナ・フレックは環境問題にまつわるこんな矛盾を作品化した。作品に使われている布は実際にアルプス山脈で雪を覆っていたもの。山脈の稜線をなぞるように吊されて、無言の問いを投げかける。
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雪の札幌で開催中の国際芸術祭へ|〈モエレ沼公園〉〈北海道立近代美術館〉〈札幌市資料館〉〈SCARTS〉【後編】へ続く
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