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漫画家の山下和美さんらにより保存が実現! 136年の時を経て洋館〈旧尾崎テオドラ邸〉がギャラリー&喫茶室に。

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February 8, 2024 | Architecture | a wall newspaper

明治時代に建てられ存続の危機にあった洋館〈旧尾崎テオドラ邸〉を、漫画家の山下和美さんらが中心となり保存し、この度ギャラリーやカフェを内包する施設として生まれ変わりました。建築に造詣の深い文筆家の甲斐みのりさんとともに、この歴史ある洋館を巡ります。

門を入り、東側の出入り口から建物の中へ。洋館好きの山下さんをして「日本一薔薇が似合いそう」と言わしめた美しさ。植栽の完成も楽しみ。

世田谷の住宅街に佇む洋館に、漫画家の山下和美さんが一目惚れしたことから始まった「旧尾崎邸保存プロジェクト」。SNSで注目を集め、世田谷区や東京都、海を越えてアメリカでも話題となり、危うく取り壊しを逃れたのが2020年のこと。山下さんは漫画家の笹生那実さんとともに土地家屋を購入。社団法人を立ち上げ、クラウドファンディングも活用して改修を進めた。

什器が運び込まれる前のギャラリー。ギャラリーでは漫画を中心とした展示が行われる。3月1日からは『旧尾崎テオドラ邸 チャリティー作品展』(3月12日まで)、3月15日からは『三原順の空想と絵本展』(4月9日まで)を開催。

明治21年(1888)に東京・麻布に建てられ、昭和8年(1933)に現在の場所へ移築され、このたび改修を終えた〈旧尾崎テオドラ邸〉。政治家の尾崎行雄の妻となる尾崎テオドラ英子のために建てられたと伝わる “水色の洋館” を、クラシック建築を愛する甲斐みのりさんが訪れた。

「解体に反対する署名運動をTwitterで目にしたのが5年ほど前だったでしょうか。その後クラウドファンディングの情報にも触れて、こんなふうに古い建築を守る手立てがあったのか、とこちらも勇気づけられる思いでした。3月からギャラリーや喫茶室として公開されると聞き、自分もあの空間に足を踏み入れることができるんだ、と心から嬉しくなりました」

1階の喫茶室。

改修を手がけたのは、数寄屋や社寺などの日本建築を専門とする建築家の田野倉徹也さん。山下さんの自邸を設計した縁もあり、山下さんとともに洋館を見学したところから、保存に向けて一緒に動くことになったという。明るい水色に塗られた外壁、玄関まわりのアイアンの装飾、3.5mもの高い天井に大きな窓や扉。装飾のあしらわれた幅木や窓台も手製の特注品。資材も構法もハイグレードに設えられた洋館の美しさを損ねることなく、現代に蘇らせることに心を砕いた。

「個人住宅として建てられて、学者たちの寄宿先にもなり、時代が下ってからは島尾伸三さん、潮田登久子さん、しまおまほさん家族のような濃厚な暮らしがあった場所。山下さん、笹生さんをはじめとする漫画家さんに田野倉さんなど、さまざまな方たちが惹きつけられて保存が叶ったというお話をうかがうと、建築が持つ、人の思いを受け止める力に感動します」

当時のまま残されている階段。ディテールも愛でたい。

〈旧尾崎テオドラ邸〉

2024年3月1日オープン。1階に喫茶室&ショップ、記念撮影スペース、2階にギャラリーが入る。東京都世田谷区豪徳寺2-30-16。10時〜18時。木曜休、展示入れ替えのため月1回水曜休。事前予約制。ギャラリー入場料1,000円。

かいみのり

1976年生まれ。文筆家。建築、旅、お菓子などを題材に執筆。『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』『朝おやつ』『日本全国 地元パン』など著書多数。

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