February 7, 2024 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは香川県高松市。和三盆の干菓子を作るための「菓子木型」を手彫りする、四国唯一の職人と出会いました。
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季節の草花や縁起ものをかたどった小さな和菓子が、日本各地で作られ始めたのは江戸時代。同じころ、高価な砂糖 “和三盆” を生み出した四国・高松藩の城下では、菓子木型の製作も始まりました。
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「菓子木型は、平面的な和菓子の図柄を立体にするための道具。硬い木を彫った型に和三盆や餡などの材料を詰め、抜き出すことでさまざまな形の菓子を作ります。和菓子文化を支える裏方ですね」
と語るのは、香川県高松市にある〈木型工房 市原〉の市原吉博さん。菓子木型は和菓子の象徴として、海外でも存在が知られているそうですが、その作り手は国内にわずか数名のみ。仕事歴50年になる伝統工芸士の市原さんも、四国で唯一の菓子木型職人です。
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まずは市原さんの工房で木型作りを見学。平刀、丸刀、三角刀など、刃の角度が違う彫刻刀を使い分けながら、ヤマザクラの分厚い板に模様を彫り進めます。
「型から生まれる立体を頭の中に描きながら、左右・凹凸を逆さに彫るんです。完成形の重さをイメージする感覚ですね。図案をスケッチすることもあるけれど、定番の模様は下絵なし。すでに目にも手にも叩き込まれています」
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木型作りは和菓子屋さんからの注文が中心ですが、最近はファッションブランドや企業が記念品として干菓子を作ることも多く、新たな依頼も増えているのだとか。
「僕はどんなに難しい注文も断らない。受けたら納得のいく形になるまで試してもがいて頑張ります。和菓子の伝統を守りたいですから」
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さて今回は、そうやって作られた梅模様の木型で、和三盆の干菓子作りも体験させてもらいました。色をつけて裏ごしした和三盆をぎゅっと型に詰め、型の端をコンコンと叩いてひっくり返す……と、小さな梅がポロンと落ちてきます。
かわいい! 本当にかわいい。繊細なおしべめしべや花びらの輪郭までしっかり表現されていることに、まず驚きます。木型ではよく見えなかったシャープな線やふっくらした立体感が、和菓子になることで初めてわかるんです。小さな形に技術が凝縮されていて、不思議な大きささえ感じました。
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作りたてを口に入れると、ふかふか、ほろほろ。今まで知っていたものと全く違うおいしさです。
「表舞台に出る和菓子のために、型という裏方を全力で作る。それが木型職人の喜びです」という市原さんの言葉が胸に響きました。
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