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【今週の花と器】コリヤナギと〈サイヤ・ハルコ〉の《マヤ》|2月

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February 5, 2024 | Design | casabrutus.com

2月1週目の担当はギャラリーを併設した外苑前の花屋〈ボイス〉のオーナー香内斉さん。寒い日が続くなか、暦の上では春に切り替わる2月。三角屋根の小屋のような器に、細く伸びた枝の先に新緑がほころぶコリヤナギを活けました。マットな質感の黒の陶器に一輪挿しにすることで、枝の勢いや、葉の色がシンプルに際立ちます。森のなかに佇む小さな家と若葉が芽吹くコリヤナギで、清々しい春の空気を取り込みます。

今回の器は、三角屋根の小屋のようではないですか。頭のなかに思い浮かんだそんなイメージをヒントに、その周りに生い茂っている森を連想するような、枝ものを活けてみたいと思いました。コリヤナギは、2月下旬から3月頃、白くてふんわりとした綿毛に覆われた花を咲かせます。その姿で流通することが一般的ですが、撮影したものは葉が芽吹いたばかりの枝。新緑の淡い緑がとても綺麗です。葉がほころんで、枝の先にちょんちょんと広がる姿に春を感じます。

器は、口が細く、一輪挿しがちょうどよかったです。枝を剪定してボリュームを減らし、繊細な枝ぶりを見せる、流れを作る、といった生け花的なアプローチもできたかもしれませんが、今回は、小屋と森のイメージがあったので、なるべく自然な様子にしようと手を加えていません。器は小さめですが正円のかたちで安定感があるので倒れる心配はなく、ボリュームを残せたのもよかったです。花材がどんな長さでもまっすぐ立ってくれる器は、ひとつあると使いやすいと思います。

コリヤナギは、ときどき水替えをしてあげると枝から根っこが生えてくることもありますよ。生命力のあかしです。こういう枝ものは丈夫で長持ちしてくれるので、葉が増えていく様子を見守るのも楽しく、上手に育てば、コリヤナギらしいふさふさとした花穂も楽しめるかもしれません。1本1本の枝は繊細ですが、そこから芽吹く淡い緑や、全体のフォルムが存在感のあるアレンジになりました。

●今週の花:コリヤナギ

樹皮を剥ぎ、枝を編み込んでつくった蓋つきの籠の容れ物「柳行李」の素材になるコリヤナギ。枝にはしなやかな弾力性があり、通気性がよく、吸湿、防虫効果があるという。

●今週の器:〈サイヤ・ハルコ〉の《マヤ》

フィンランドのヘルシンキを拠点に活動する、陶芸家でデザイナーのサイヤ・ハルコ。アアルト大学のアートデザイン建築学部でセラミック・ガラス美術の博士号を取得後、プロダクトデザイン、空間デザインの修士号を取得。デザインを多角的に学び、その深い造詣を活かしながら、素材の特性と向き合いながら静謐な陶磁器を小規模生産で生み出してきた。粘土と釉薬の調和が生み出すマットな質感の一輪挿しは、ポプリやお香入れとしても使いやすい。〈サイヤ・ハルコ〉の《マヤ》φ9×H12cm 各10,450円(ディエチ TEL 06 6882 7828)

香内 斉|こうない ひとし

フローリスト。外苑前にあるギャラリー併設のフラワーショップ〈VOICE〉を2017年にオープン。家具や陶芸、絵画や写真などさまざまなジャンルの展示を行う。また、生産者と直接関わりながら、彼らの”声”とともに花を届ける。生け込みやウェディング、インテリアの展示空間に花をスタイリングするなど多岐に渡って活動している。

〈VOICE|ボイス〉

東京都渋谷区神宮前3-7-11 JINGUMAE HOUSE 1F。*最新の開店スケジュールや開催中の展示はインスタグラム@voice_flower.jpでチェック。

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