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【本と名言365】池波正太郎|「…して飲むのが、ビールの本当にうまい飲み方なんですよ」

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February 1, 2024 | Culture, Food | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。時代小説家で映画評論家、そして美食家でもあった池波正太郎。50歳半ばを過ぎてから語った「作法」とは。

池波正太郎/作家

コップに三分の一くらい注いで、飲んじゃいれ、飲んじゃいれして飲むのが、ビールの本当にうまい飲み方なんですよ。

東京下谷の小学校を卒業後、株式仲買店などで働き海軍に入隊するまで、読書、映画、観劇の日々を過ごした池波正太郎。戦後、区役所勤務、劇作家を経て小説家に。1967年に連載が始まった『鬼平犯科帳』、ともに72年にスタートした『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズで知られる。シネマディクトを自認するほどの映画好きでもあってフランス映画にまつわるエッセイもあり、食にまつわる著書も少なくない。

旺盛に仕事をこなし芸術もうまいものも知る池波が1981年、57歳になる年に発売したのが『男の作法』。初夏に由布院の宿にこもって語り、次の秋に訪れたフランスでの経験を踏まえて仕上げた。柔やかな口調で衣食住から心遣い、生と死まで語る。

「そばを食べるときに、食べにくかったら、まず真ん中から取っていけばいい。そうすればうまくどんどん取れるんだよ」

「コップに三分の一くらい注いで、飲んじゃいれ、飲んじゃいれして飲むのが、ビールの本当にうまい飲み方なんですよ」グラスに残して置いたビールはぬるくなるし、気も抜ける。だからこの飲み方が一番だというわけだ。

このとおり「作法」といってもかしこまったルールではない。池波流の暮らしの知恵でありこだわりなのだ。だからこそ、ビールをおいしく飲む方法なる、普段は深く考えもしないけれど知れば嬉しいことを学ぶことができる。さらに読み進めるうちに、こうした自分なりの知恵を持つことこそが大人に欠かせない「作法」なのだと感じるはずだ。

酒、バー、読書、本屋、旅行、休日、理想など種々のことがらについて語りおろした1冊。挿画は池波正太郎、解説は翻訳家の常盤新平。『男の作法』新潮文庫605円/1984年。

いけなみ・しょうたろう

1923年東京浅草生まれ。長谷川伸に師事し劇作家として活躍したのち、1960年「錯乱」で第43回直木賞を受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛け人・藤枝梅安』の三大シリーズで時代小説の第一人者に。1990年永眠。〈神田まつや〉の化粧箱の絵は池波によるもの。

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