Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

【今週の花と器】みかんと〈ヘイ〉の《ジェシカ ハンス ベース》|1月

$
0
0

January 1, 2024 | Design | casabrutus.com

謹賀新年。1月1週目の担当はギャラリーを併設した外苑前の花屋〈ボイス〉のオーナー香内斉さん。こたつや食卓に積み上げておくと、つい何個も食べてしまうみかん。昔から縁起物として知られ、鏡餅やしめ縄に飾る冬の風物詩を活けてみませんか。カラフルなハンドペインティングが祝祭的なムードを高めてくれる器と、晴れやかな橙色で、実りのある1年がはじまります。

こたつでみかん。お正月と聞いてパッと思い浮かぶシーンです。あとはやはり鏡餅でしょうか。今回の器は、形づくりから着色まで、すべて手作業でつくられているそう。手でこねたような形や白という色がお餅を想像させたので、きっとみかんは合うだろうと。大喜利みたいですね(笑)。こんなふうに、思い浮かんだ季節のイメージやイベントから言葉で連想をはじめて、アレンジのヒントにするのは楽しいと思います。

活ける際のポイントとしては、今回、葉っぱを間引きました。葉っぱが落ちて、熟した実だけが枝に残る、冬らしいみかんの見え方にしようと思ったからです。茎についた葉は摘み取り、実の近くには残しています。みかんを絵に描くとき、葉があると「みかんらしさ」が出ますよね。実をしっかりと見せて、それが冬の風景へつながっていくようなあり方に整える。こうして、まず見せ方を考えて自然に手を加えるのは、生け花のアプローチに近いかもしれません。とはいえ、ストイックにはなりすぎず、みかんといえば、という印象も大切にしました。

器の特徴である、ポップな絵つけには浮遊感があります。なので、みかんも浮かんでいるように見えたらいいなと思いました。これで葉っぱが沢山ついていると、ちょっと要素が多い。正月を彩るにぎやかなムードがありながらも、清々しい冬の空気に寄り添う静けさも欲しかった。お正月にみかん。とてもストレートな選択ですし、茶目っ気を出しつつも、どこか静謐な佇まいにまとめるのが〈ボイス〉らしい提案かもしれません。

●今週の花: みかん

鏡餅や正月飾りにみかんが使われるのは、実が熟した後も木から落ちずに残る姿や、その色が「橙(だいだい)」といって家族や子孫が「代々栄える」という意味合いに結びつくから。

●今週の器:〈ヘイ〉の《ジェシカ ハンス ベース》

成形から装飾まで、すべて手作業で行う炻器(せっき)のフラワーベース。まさに、手の痕跡が残るようないびつな造形がプリミティブな力強さを感じさせ、不規則な線や点がダイナミックに重なりあう。地球や岩に自然現象として発生する模様や質感と、コンテンポラリーなモチーフを組み合わせる、デザイナーのジェシカ・ハンスらしい大胆なデザイン。〈ヘイ〉の《ジェシカ ハンス ベース》φ15×H27cm 17,600円(HAY TOKYO TEL 03 6427 9173)

香内 斉|こうない ひとし

フローリスト。外苑前にあるギャラリー併設のフラワーショップ〈VOICE〉を2017年にオープン。家具や陶芸、絵画や写真などさまざまなジャンルの展示を行う。また、生産者と直接関わりながら、彼らの”声”とともに花を届ける。生け込みやウェディング、インテリアの展示空間に花をスタイリングするなど多岐に渡って活動している。

〈VOICE|ボイス〉

東京都渋谷区神宮前3-7-11 JINGUMAE HOUSE 1F。*最新の開店スケジュールや開催中の展示はインスタグラム@voice_flower.jpでチェック。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

Trending Articles