December 26, 2023 | Art | casabrutus.com
境界を越境する独創性の高いアート群で国内外から人気を博した〈チームラボボーダレス〉が、お台場から麻布台にやってくる。〈森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス〉が2024年2月9日、〈麻布台ヒルズ〉にオープン。現在制作中の新たな作品群や日本未発表作品から先行して公開された2作品を紹介!
さる11月に開業し、話題を集める〈麻布台ヒルズ〉。2024年2月9日、施設内にチームラボによるミュージアム〈森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス〉が誕生する。この度オープンに先駆け、新作の《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》、《花と人- Megalith Crystal Formation (work in progress)》、《Black Waves - Megalith Crystal Formation (work in progress)》が先行して発表された。
さまざまな作品群が部屋から部屋へと移動し、作品同士が影響を受け合って混ざり合う。そんな境界線のない世界を提示する〈チームラボボーダレス〉。2018年にお台場でオープンし国内外の注目を集めたこのミュージアムが、麻布台へとステージを移し、さらなる進化を遂げそうだ。作品群の移動はより多くの場所へと、その関係はさらに複雑になり、永遠の変化を続けていく。
まずエントランスから、チームラボらしい仕掛けが。壁にペイントされた文字は、一定の場所からカメラを通して見ると、宙に浮かんでいるように見える。そんな入口を抜けると、思いのまま展示空間へと足を踏み入れ、自由にさまよう“地図のないミュージアム”の始まりだ。
・Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光
今回発表された新作の一つは、「認知上の存在」をテーマにした《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》。全面ミラーで覆われた空間には無数の輝く球体が吊られ、さまざまな光が関係し合いながら存在している。
球体をよく見ると、内側でさまざまな光が混在しているのだが、チームラボ代表の猪子寿之はこう話す。
「球体の中には実態のある光と、周りの球体群が作り出している光、我々が“シャボン玉”と呼んでいるキランとした強い光、そしてゼリーのようにプルンプルンと揺らぐ光が入り混じっています。
“光のシャボン玉”というのは、我々の認知世界上に存在する光。普通の世界には、光の球体なんて存在しないですから…。と、こんな話をしていると訳が分からなくなってくるんですけど、実際に見ても訳が分からないと思います(笑)。スマホのAIも知らない世界すぎてうまく映らないので、写真を撮るのは諦めて、この新しい世界を楽しんでいただければと思います」(猪子)
また、球体自ら球体内のすべてのパターンの光を生み出すことはできず、ほかの球体群や人の存在と呼応し合って光り出す。人が近くで立ち止まると、最も近い球体が強く輝いて音色を奏で、その光はまた最も近い球体へ……。やがて、一筆書きのように連なった美しい光の線を生み出す。くわえて、同時に他者が生んだ光の線と交わっていくのも面白い体験だ。
・Megalith Crystal Formation(work in progress)
《Megalith Crystal Formation》の展示空間には、巨大な造形物が壁から突出するかのように乱在。それらが互いに時空でつながり合い、「花と人」「Black Waves」という表情の異なる作品を作り出していく。
《花と人- Megalith Crystal Formation (work in progress)》は、真っ赤な花々が誕生と死滅を永遠に繰り返していく作品。人々が近くを動くと花々は散っていき、じっとしていると花々がより多く生まれてくる。周りにいる人の動きに影響を受けて変化し続けるため、今この瞬間にある絵は二度とは鑑賞することができないという。
花々が散ったモニターに、やがてダイナミックな波が現れる。それが、《Black Waves - Megalith Crystal Formation (work in progress)》だ。粒子の軌跡で描いた線の集合でできた波は、まるで生き物のようにうねり、だんだんと崩れ落ちていく。大海に包まれるようなその空間は、生命の強さと儚さを感じずにはいられない。
同じ空間でまったく違う体験ができるのはもちろん、別の部屋のアート群がこの部屋に入り込み、作品同士が混じり合っていくことも想定されている。人為ではなく、コンピューターがリアルタイムで作り出す世界のため、どんな形になるのかはチームラボのメンバーですら想像できないそうだ。それこそが、境界のないアートの面白さでもある。
作品と人、作品と作品がつながるボーダレスなアートが、新たなミュージアムの中でどうスケールアップしていくのか。チームラボの新しい挑戦が、今から待ち遠しい。