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〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉でシモン・アンタイの世界に触れる。

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November 13, 2023 | Art | casabrutus.com

「フォールディング」(折り畳み)と呼ばれる独特の技法で生み出された “幻の画家” シモン・アンタイの作品。偶然の絵画が〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉に現れました。

左:TABULA (1980) 《タビュラ》シリーズはほとんどが単色のシンプルな構成だが、画面から生まれるリズムは複雑だ。このページの2点は世界初公開。右:TABULA (1980) キャンバスに結び目を作り、裏返して絵の具をつける「折り畳み」によるもの。結び目の固さなどによって多様な効果が得られる。

「フォールディング」(折り畳み)というユニークな技法で独自の表現を追求したシモン・アンタイ。日本はもちろん、拠点のフランスでも紹介される機会があまりなかった“幻の画家”だ。その作品を集めた個展が〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉で開かれている。

シモン・アンタイは1922年ハンガリー生まれ。1949年にパリに移り、シュルレアリストたちと交流を持つ。動物の骨など不穏なモチーフを組み合わせた絵画はシュルレアリスムの創始者、アンドレ・ブルトンからも評価されるが、後に袂を分かつ。その次にアンタイが出会ったのはジャクソン・ポロックの作品だった。床に置いたキャンバスに絵の具を垂らす「ドリッピング」によって描かれた作品は作家が完全にコントロールすることのできない、“偶然の絵画” ともいえるものだ。

左:MARIALE m.a.4, PARIS (1960)、右:MARIALE m.d.4, PARIS (1962) 「聖母マリアのマント》シリーズでは折り畳んで色を塗ったあと、余白にまた色を塗っていた。このシリーズは14世紀の画家ジョット・ディ・ボンドーネの《荘厳の聖母》に描かれた聖母のマントから受けた衝撃が元になっているという。

こうした経験を経て1960年代にアンタイは「手法としての折り畳み」を生み出す。キャンバスをしわくちゃにして絵の具をつける、着物の絞りのように糸でキャンバスを縛り、顔料につけるといった手法。いずれもどのような画面になっているかはキャンバスを広げるまでわからない。ポロックのドリップ・ペインティングはもちろん、意識や理性を介在させずに絵を描くシュルレアリスムの「自動筆記」という手法にも通じる。

80年代に入って彼は引退を表明する。その後は発表の機会もほとんどなかったため、半ば忘れられてしまう。しかし実際には制作を続け、デジタルプリントなど新たな手法にも挑戦していた。

TABULA, MEUN (1975) 《タビュラ》シリーズの1点。

今回の個展は2022年にパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで開かれた『シモン・アンタイ生誕100周年記念展』に続くもので、〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉のために特別に企画された。パリでも展示されたことのない世界初公開作品が2点、含まれている。再評価の気運が進むシモン・アンタイの作品を見られる貴重な機会を逃さないようにしたい。

『SIMON HANTAÏ - FOLDING』

フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品から1960~80年代のシモン・アンタイ作品を紹介。〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉大阪府大阪市中央区心斎橋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋5F TEL 0120 00 1854。~2024年2月4日。12時~20時。休館日はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる。入場無料。

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