October 6, 2023 | Culture | casabrutus.com
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。辛口で知られたモード界の帝王は、自身の仕事をどのように捉えていたのか。その言葉は常にいまという時間を見据えた彼を体現するものでした。
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わたしに与えられた役目はつくることであって昔を思い出すことじゃない
シャネル、フェンディ、クロエなど、さまざまなメゾンでデザイナーやクリエイティブディレクターを務めたファッション界の巨人がカール・ラガーフェルドだ。濃色のサングラス、ポニーテールに結った白い髪、高い襟のシャツという容姿をトレードマークとしたラガーフェルドは、自身がなによりのブランドでありアイコンであった。
パリでファッションを学んだラガーフェルドは1964年にフリーランスのデザイナーとして〈クロエ〉と契約する。数点のデザインから始まった仕事は、やがてコレクションすべてを手がけるに至った。続く1965年にも〈フェンディ〉と契約し、伝統的なフォルムの毛皮のコートを一新することでブランドを刷新した。なによりよく知られるのが、ココ・シャネルの死後に低迷していた〈シャネル〉を劇的に復活させたことだ。これを機に、老舗ブランドが外部デザイナーらの招聘で再興する手法が定着。さらに2004年にいち早く〈H&M〉とコラボレーションを行い、リーズナブルなSPAブランドとラグジュアリーなメゾンやクリエイティブなブランドとの協業の先駆けとなった。このようにラガーフェルドの仕事は常に革新的だった。
一方、ラガーフェルドはたびたび辛口な発言で世界を騒がせた。特に晩年の発言は政治的な正しさに欠けるものも少なくなかったが、博識ゆえの含蓄に富んだ発言も多かった。彼は無類の本好きで、天井に届くほどに高く積まれた本に埋め尽くされたアトリエの姿を見たことのある人も少なくないだろう。モードについてはもちろん、社会問題についてもたびたび言及した。そのラガーフェルドは、自身の仕事を「わたしに与えられた役目はつくることであって昔を思い出すことじゃない」と語る。その過激な発言を集めた本から見えてくるのは、彼は常に自分を客観視し、時代を見据えてきた姿だ。いまこの瞬間を生き続けた彼の仕事は、結果としてタイムレスなマスターピースとなってファッション史に大きな足跡を刻んだ。
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