June 21, 2021 | Architecture, Design | casabrutus.com
世界で活躍する16名のクリエイターと共に、東京・渋谷区内に新しい公共トイレを設置する「THE TOKYO TOILET」。その8作目となるトイレが神宮前1丁目に誕生した。デザインは、あのストリートカルチャーのパイオニア、NIGO®です。
ビルとビルの間にひっそりと建つ、家型のかわいらしい建物。道行く人も思わず振り返っては「かわいい!」と口にする。できれば入りたくない、と思うことが多かった公共トイレに、思わず入ってみたくなるのだから驚きだ。
神宮前一丁目に誕生したこの公共トイレに、NIGO®が付けた名前は「THE HOUSE」。白い壁に赤茶色の屋根、そしてペパーミントグリーンの窓枠……。建築に詳しい人なら、あれ? これって何かに似ているような……?と気づく人も多いはず。そう、実はこのデザインの基になっているのは、通称「米軍ハウス」。戦後、1946年に現在の代々木公園一帯に設けられたワシントンハイツの「ディペンデント・ハウス」だ。
原宿の歴史を語る上で外せない存在であり、戦後カルチャーの始まりに大きく関わった「ディペンデント・ハウス」。渋谷区内に現存するのは、わずか1棟で、街の記憶から消えつつあるその家のデザインを、ゆかりの地、原宿に改めて持ち込んだ。
「コンセプトは温故知新。懐かしくも感じ、新しくも感じていただければ」とNIGO®。
思わず入ってみたくなるのは、女性用、男性用など各エリアへの入り口が常に開いていて、家の中へどうぞ、と招き入れられているように感じるから。開け放たれたように見える内開きのドアは、動かないフェイクドアで、入りやすさのデザインとしてあえて設けているのが心憎い。
入った先の空間はシンプルで無理がなく、三角屋根の型をそのまま受けた高い天井も心地いい。
自分の家や友人の家といった親しみのある場所のトイレは、きっと誰もがきれいに使うだろう。懐かしくも新しい、この「THE HOUSE」に感じる親しみは、きれいに使われ続けるという公共トイレの新しい在り方に繋がるかもしれない。