November 23, 2020 | Travel, Architecture, Culture, Design, Food | casabrutus.com
2020年11月、京都の二条城を望む最高の立地に開業した〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉。三井総領家の記憶と財を受け継いだ、京都でも有数のラグジュアリーホテルです。その詳細をレポート!
●三井財閥の歴史と粋を受け継ぐホテル。
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京都が誇る世界遺産〈元離宮二条城〉の至近に、三井財閥総領家である北家の邸宅「油小路邸」が250年にわたり存在した。歴史の移り変わりとともに土地には様々な建築が生まれたが、2020年11月、この地に油小路邸の記憶を継ぐホテルが誕生した。
京都に息づく文化と美意識、三井の伝統。〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉はそのすべてを受け継ぎながら、最先端のデザインも兼ね備えたホテルだ。マスターディレクターは建築家・栗生明。そしてインテリアデザイナーに香港のアンドレ・フーと赤尾洋平を、ランドスケープデザインには宮城俊作を迎えた。スペシャリストたち各々が「京都」「三井」の歴史と粋を考慮し構築したデザインは、ホテル内のどこに目をやってもその考え抜かれた美に驚くほどだ。
●二十四節気を表現する大庭園。
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このホテルにおいてもっとも特徴的なのが、ロビーに入ると眼前に広がる、奥行約50m、幅約30mの大庭園だ。北家は池を中心に周囲に建物を配した「池泉回遊式庭園」という建築様式であったが、ランドスケープデザインを担った宮城は南に邸宅に相当する「四季の間」を、北に庭を配置し、京都に古くから伝わる「南庭北園」の考えに準ずるものに仕上げた。手水鉢や沓脱石、灯篭など庭を構成する大切な要素は、北家から継承したものを用いたという。四季を映し、いつ訪れても違った風景を見せる大庭園はこのホテルを選ぶ大きな理由の一つだろう。
●歴史と伝統を体現する場所。
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マスターディレクターの栗生がもっとも大切にしたのは、「歴史の積層感」。歴史と伝統に敬意を払い、この地に存在した景石や灯篭などを随所に配したが、一番大きなものは建造から300年を経た「梶井宮門」だろう。柱間4.5m、高さ7.4mを誇るこの遺構は、現代の宮大工の技術をもって修復された。当時のものをなるべく残し使用した瓦、魔除けとして飾られた桃の意匠。奥に覗くモダンなデザインのホテル外観と並び建つ姿はまさにホテルが掲げる「歴史性」と「先進性」の調和を体現している。
また、油小路邸の中心にあった庭園の四季の移ろいを感じられる奥書院・通称「四季之間」は、その姿を継承し、総檜造りの新たな姿で蘇った。奥には現代日本画家・朝倉隆文が描く〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉の四季をモチーフにした襖絵が飾られている。
●二条城を望む圧倒的眺望のゲストルーム。
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部屋のタイプは11種類。注目は大きな窓から二条城を眼前に望む「ニジョウスイート」と「ニジョウルーム」。京都の歴史を語る上で欠かせない二条城をこのダイナミックさで堪能できる宿は、他にはない。〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉の唯一無二のロケーションを存分に感じることができる。
●敷地内で湧いた「京都二条温泉」に浸かる。
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水甕状の地形的特徴から、豊かな名水をたたえる京都の地。ここでは敷地内の地下約1,000mから湧いた「京都二条温泉」を、「サーマルスプリング」、スイートルーム「Onsenスイート」、プライベート温泉などに利用している。
地下の「サーマルスプリング」は、赤尾洋平がインテリアデザインを手がけた。広々とした空間の中心に据えられたのは、香川県高松市で採掘された巨大な庵治石。中心からカットされたその断面の美しさが仄かな光に照らされ、滴る水音も響くような静寂の空間を引き立てている。
●五感を満たす2つのレストラン。
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〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉はガストロノミー鉄板料理の〈都季-TOKI-〉、イタリア料理〈FORNI(フォルニ)〉という2つのレストランを備えている。〈都季-TOKI-〉は〈リッツ パリ〉や〈ホテルオークラアムステルダム〉など名だたるホテルで経験を積んだ浅野哲也をメインシェフに迎え、浅野が得意とするフランス料理と日本料理を生かしたまったく新しい鉄板料理を提供。国産の黒毛和牛や京野菜などをふんだんに使用し、ホテルのテーマである「庭屋一如」を料理で表現する。
また、オールデイダイニングでもあるイタリア料理〈FORNI〉では、中心に据えられた薪窯で焼き上げるピッツァやグリル料理を楽しめる。
どちらのレストランも庭園を眺めながら食事ができるように設計されているが、とくに〈都季-TOKI-〉のカウンターは特等席。目の前で鮮やかに食材に手を入れていくシェフの手さばきを見ながら、背景では灯篭のあかりで浮かび上がる庭園を堪能できるのだ。
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ただ「京都らしい」を表現したものではない、長い歴史から受け継がれてきた圧倒的な”本物の美”。京都の最高のラグジュアリーは、きっとこの宿の中にある。