August 19, 2020 | Design, Architecture, Food, Travel | casabrutus.com
東京・渋谷の最新カルチャースポットとして話題を呼んでいる〈MIYASHITA PARK〉。その敷地内にオープンしたホテル〈sequence MIYASHITA PARK〉には、「つながり」をテーマにしたユニークな提案が満載だ。公園に隣接という恵まれた環境を満喫する「都市型ホテルの新たな過ごし方」をご紹介します。

「都市と人とつながるホテル」をコンセプトに、8日1日に開業した〈sequence MIYASHITA PARK〉。プロデュースを手がけたのは、食のセレクトショップ〈DEAN & DELUCA〉をはじめ、〈CIBONE〉〈TODAY’S SPECIAL〉といった人気ライフスタイルショップを展開する〈ウェルカム〉。衣・食・住すべてにおいて培ってきたノウハウが随所に活かされている。

シークエンス=続く、繋がるという意味の通り、人や街との「ゆるやかなつながり」がこのホテルが大切にする滞在価値だ。それを象徴するのが4階のロビーラウンジだろう。インテリアデザインは谷尻誠と吉田愛が率いる〈SUPPOSE DESIGN OFFICE〉が担当。青々とした芝生が眩しい宮下公園に、段差や間仕切りもなくシームレスにつながっているのが気持ちいい。ロビーに併設するカフェ〈VALLEY PARK STAND〉は公園とホテルを結ぶ接点であり、宿泊者とビジターが混在してくつろげる場になっている。公園と〈MIYASHITA PARK〉内の商業施設、そしてホテルを自由に行き来して複合的に楽しめるミクストユース感がなんとも新鮮なのだ。

●17時イン&14時アウトを実現! 居住性と遊び心が詰まったゲストルーム。

6階から17階までは240室を擁する客室エリア。「感性にあふれた東京の部屋」をテーマに、客室デザインは〈Puddle〉の加藤匡毅が手がけている。主役となるのはやはり、可能な限り大きく取られた窓からの眺望だ。フレームに切り取られた景色は時を追うごとに変化し、見飽きることがない。
〈HAY〉やデンマークの名匠ボーエ・モーエンセンの家具、奈良に拠点を置く〈ニューライトポタリー〉の照明などが散りばめられているのも家具好きならニヤリとしてしまうポイントだ。渋谷の街の風景という “本物感”に負けないよう、木材やスチール、皮革など、細部まで天然素材を使用していることも、シンプルな中に豊かさを感じさせる理由だろう。

そしてホテルファンにとって感動的なのは、チェックイン&チェックアウト時間の常識を覆し、17時イン、14時アウトを実現させたこと! 朝食も12時まで食べられるので、前夜にバーで飲み明かしても安心して朝寝坊できる。もちろん早起きして午前中は周辺を散策し、ゆっくりランチを楽しんでから出発することも可能だ。この滞在時間の変化が、より活動的で有意義な過ごし方を生み出すに違いない。

●メインダイニングもミックスカルチャー。テーマはなんとシルクロード!

朝食からディナーまで提供するのは5階のダイニング〈Dōngxī Restaurant & Sakaba 〉。店名は東西(ドンシー)を意味し、シルクロードがテーマ。「東と西のあいだ」にある国々の食文化を果敢にミックスした“名前のない創作料理”で、メニュー開発は長年〈DEAN & DELUCA〉のエグゼクティブ・シェフを務めていた境哲也が担当。ハーブやスパイス、発酵調味料などを合わせ、日本の良質な食材を使って一皿に仕上げる。
中国、東南アジア、中央アジア、中近東、果てはヨーロッパまで縦断し、フォーやフムス、ファラフェル、そしてタパスと縦横無尽。エッジの効いたスパイシーな料理に合わせるのは力強い個性を持つニューワールドのワイン。タパスで軽く一杯、というカジュアルな使い方も重宝しそうだ。

そしてバー〈sakaba〉では、いま世界的にも話題のクラフトカクテルが味わえる。NYで活躍した経歴を持つバーテンダー、宇塚健が作り出す、ワサビなど和の食材を使った一杯が実に楽しい。無国籍なスパイスフードにクラフトカクテルと、世界の食事情に精通する〈ウェルカム〉ならではの旬なアプローチ! ほかに18階のルーフトップバー〈SOAK〉などもオープン予定だ。
このホテルには、丁寧な空間づくりによって生まれる快適さと上質感、ずっと部屋にいたくなる居住空間としての成熟度など、ライフスタイルショップを成功させてきた〈ウェルカム〉ならではの手腕が詰まっている。シティホテルとリゾートのはざまとでも言うべきか、カジュアルでいてきちんと大人っぽさがあり、旅ならではの非日常感や高揚感があるのだ。長距離の移動は消極的にならざるを得ないこの時期は、渋谷の一画で束の間の非日常を楽しむのも良いかもしれない。新たに整備された宮下公園のグリーンの成長とともに、このホテルが渋谷という都市にゆるやかに根付いていくのが楽しみだ。
